県内で今年万引をして摘発された人の3割余りは65歳以上の高齢者で、「生活が苦しい」など経済的な動機を挙げていることが23日、県警などへの取材で分かった。警察庁によると、高齢者の万引は全国的に増えている。万引の場面に接する県内スーパーの関係者はお年寄りの寂しさも感じ取っており、専門家は「生活に困っているだけでなく、地域での孤立も一因だ」と指摘。孤立させない対策の必要性を訴えている。 県警によると、県内で今年1~11月に万引で摘発されたのは1434人で、このうち高齢者は31・9%(458人)を占めた。前年同期も1578人のうち、高齢者は31・0%(489人)に上った。警察庁によると、全国で今年1~11月に高齢者2万5821人(全体の32・6%)が万引で摘発され、1993年の4948人(8・2%)に比べて人数、割合ともに大きく増加した=グラフ。 県内のスーパーは取材に対し、万引した高齢者は生活苦のほか、「年金暮らしでお金を払うのがもったいなかった」などの動機を挙げる人が目立つと説明。担当者は「年金暮らしで生活が苦しく、食べるのに困っている人が多いと感じる」と話している。 社会福祉学が専門で、高齢者の犯罪にも詳しい長野大(上田市)の高木博史助教(39)は、高齢者が万引する理由として、生活が困窮している、地域で孤立し、誰かに相手にしてほしいと感じている、認知症で善悪の判断がつかない―の3点を挙げる。 お年寄りと万引との関係については調査に基づいた具体的な施策がまだ取られていないといい、「生活苦の場合、生活保護の受給といった対応を助言する支援者が欠かせない。孤立を防ぐため、配食サービスの際の声掛け、高齢者がふらっと立ち寄れる場を地域につくるなど、お年寄りが地域と関わっている状況が必要になってくる」と指摘している。(長野県、信濃毎日新聞社)
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