埴科郡坂城町のしなの鉄道坂城駅構内で9月3日未明、最終の上り普通列車と工事用車両が接触した事故について、しなの鉄道の藤井武晴社長らは25日、上田市の本社で記者会見し、事故原因の最終報告と再発防止策を発表した。原因は作業監督者が指令室の許可を得ずに車両を動かしたためだったとあらためて説明。対策として、工事用車両の進出防止柵を近く設けるほか、作業員の役割分担を徹底し、作業マニュアルをより詳細に作るなどとした。 しなの鉄道によると、事故当日、工事用車両は屋代―篠ノ井間の線路下の敷石を突き固めるために、坂城駅を最終の上り普通列車が通過した後、本線に入る予定だった。監督者1人と作業員1人が準備作業をしており、監督者の腕時計が3分進んでいたため、監督者は最終列車が通過したと思い込み3日午前0時3分、作業員に指示をして車両を動かした。本線に入る際に軌道を切り替える「横取り装置」を車両のライトで照らすため、本線ぎりぎりまで寄ったという。横取り装置の照明は現場を上部から照らす位置にあるが、スイッチはホーム側に離れているため、車両を本線近くまで動かし、そのライトで照らした。 氷熊(ひぐま)武文・取締役運輸部長は、監督者が最終列車の通過を確認しなかっただけでなく、指令室に作業の開始を連絡しなかったことが事故の直接的な原因だと説明した。 進出防止柵は、引き込み線上で列車との接触を避けるための「車両接触限界標」より手前に設け、監督者が鍵を開けて倒さないと通れないようにする。坂城駅のほか、横取り装置がある信濃追分(北佐久郡軽井沢町)、平原(小諸市)、田中(東御市)、千曲(千曲市)の全4駅にも設置。また横取り装置向けの照明とスイッチが100メートルほど離れていたことも事故の背景にあるとして、坂城、信濃追分、田中の3駅でスイッチを照明の近くに移動するとした。 藤井社長は「今回の事故で、基本を守ることの重要性をあらためて感じた。今後は基本を見直し、安全で安定した輸送を続けたい」と述べた。(長野県、信濃毎日新聞社)
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