下伊那郡天龍村で伝承されている国重要無形民俗文化財の「向方(むかがた)のお潔(きよ)め祭り」「坂部の冬祭り」「大河内の池大(いけだい)神社例祭」を映像で記録するのに合わせて、来年1月3日の「お潔め祭り」が例祭より舞などの数が多い臨時祭として開かれることになった。祭りの全容を記録するのが狙いだ。臨時祭の開催は38年ぶりで、経験者は数えるほど。同祭りの保存会員らは過去の資料も参考にしながら準備を進めている。 映像は、村や同保存会、他の二つの祭りの氏子会などでつくる実行委員会が、飯田市美術博物館の協力を得て収録する。日程は、お潔め祭りに続き、1月4~5日が坂部の冬祭り、同5~6日が池大神社例祭。専門業者に依頼し、カメラ3台を使って笛や太鼓の演奏、舞などを記録する。 お潔め祭りでは、宮人(みょうど)と呼ばれる氏子が、天照大神社の社殿脇の舞堂に据えられた湯釜の周りで舞う。鈴や扇子、剣を手に踊りながら集落の繁栄や無病息災を祈る。 臨時祭は、国や村の祝い事などに合わせて行い、「花の八乙女の舞」「火伏せの舞」といった特別な舞が披露される。ただ、1974(昭和49)年に国選択無形民俗文化財に指定されたのを祝って76年に開催したのが最後。78年に「天龍村の霜月神楽」として国重要無形民俗文化財に指定された時も行われず、住民らは例祭に臨時祭の舞を取り入れるなどして伝承してきた。 向方の住民らは、76年の臨時祭を記した文書などを参考に、例祭なら2日ほどの練習を6日に増やして本番に臨む。保存会長の金田司(かなだつかさ)さん(79)は「地区全体で気合が入っている。しっかりと記録に残すことで次の世代に正しく伝承したい」と話している。(長野県、信濃毎日新聞社)
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