茅野市は今年、県花リンドウ生産の「復活プロジェクト」を始める。県内主産地の同市には約半世紀にわたる生産の歴史があるが、生産者の高齢化や栽培品種の多様化が進み、栽培が途絶えかねない状況。県全体の生産量は最盛期の1割以下という。市はベテラン生産者に育苗を委託し、補助金を出して栽培希望者に安く提供する計画。将来は八ケ岳を背景に咲くリンドウを観光資源にすることも構想している。 市農業支援センターによると、茅野市のリンドウ栽培は県内でも早い1950年代前半に始まった。八ケ岳山麓の自生株と、北海道や東北などから導入した品種の交配を重ね、「濃紺の花の色と花弁の大きさが特徴になった」という。 茅野市は冷涼な気候がリンドウ栽培に適し、最盛期の70~80年代には市内最大産地の湖東(こひがし)地区だけで100人余りが生産し、78年には市花にも指定された。 だが、現在の生産者は市全体で26人に減少。平均年齢70代前半と高齢化も進んだ。露地栽培が基本のリンドウは、種をまいてから出荷までに約3年必要で、収入を得るまで時間がかかる。土壌病害の拡大、栽培品種の多様化もリンドウ生産者が減る要因となった。 危機感を募らせた市は、湖東地区で40年以上リンドウを栽培する渡辺貞男さん(78)に委託してハウスを使った苗の一括栽培を2月から始める。露地だと約1年かかる育苗期間が、ハウス内では4カ月ほどに短縮でき、育苗中に病気にかからなくなる。渡辺さんら複数の生産者に種を提供してもらい、育苗にも関わってもらうことで、地域で改良を重ねたリンドウの子孫を残す試みだ。 2月上旬に専用のトレーに種をまき、5月中旬には苗として販売。市は補助金を出し、苗の価格を抑える方針だ。今年提供できる苗は最大2万7千本程度だが、栽培希望者が多ければ、来年以降の増産を検討する。 80年代、市内で最も多い年間約20万本を出荷していたという湖東地区の小平昭五さん(83)は「より多くの人に育ててもらえるよう、栽培技術に関する経験を伝えられればうれしい」と話している。(長野県、信濃毎日新聞社)
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