奈良市の薬師寺は22日、東塔(国宝)の解体修理工事で見つかった長野県内の小中高校名が刻まれた瓦について、4月から一部を同寺で公開すると明らかにした。4月から5月は、全国から奈良・京都方面への春の修学旅行がピークを迎える。松久保伽秀(かしゅう)執事は「約1300年前の塔建立に込められた思いや、60年ほど前にそれを守ろうと(保存のための寄付を)した信州の子どもたちの思いに触れてほしい」としている。 公開する瓦は、内部にひびが入っている可能性などから再利用されないと決まった約60枚を予定。境内の大講堂に展示する計画という。秋から冬にかけての修学旅行が一段落する12月ごろまで公開する方向で、文化庁などと調整している。 県内小中高校の名称などが刻まれた瓦は309校の計345枚。全国の個人や団体の名前が刻まれた瓦は4815枚あったが、まとまった量があったのは長野県だけだった。 22日には、瓦に校名が刻まれていた上田市第二中学校で、1、2年生計約180人を対象にした修学旅行の事前学習があり、松久保執事が講演。1950(昭和25)~52年の修繕工事の際、奈良県側の依頼で信濃教育会が長野県内各校に寄付を呼び掛けた経緯などを話した。2年生の柳堂浩太君(14)は「二中の先輩も関わって塔が守られてきたと聞き、興味が湧いてきた」と話した。 寺によると、修学旅行で長野県内からは年間約100校が訪れているという。文化庁は、再利用しない瓦は原則として廃棄処分するよう求めているが、寺や信濃教育会は保存の可能性を模索。茅野市教委内などからは、地元の校名が刻まれた瓦の譲渡を求める声も出ている。(長野県、信濃毎日新聞社)
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