県建設業厚生年金基金(長野市)が年金資産を未公開株を扱うファンドに投資し、巨額の損失が出ている問題で、基金側は28日、資産の運用を委託したソシエテジェネラル(SG)信託銀行が投資先企業の実態を踏まえずにリスクの高い投資をしたなどとして、業務を引き継いだSMBC信託銀行(東京)を相手取り、約58億3400万円の損害賠償を求めて東京地裁に提訴した。 基金側は2004年1月~06年5月にかけ、計約54億4300万円をSG信託銀行に委託。SG側は、ファンド運営会社アール・ビーインベストメント・アンド・コンサルティング(東京)が運営するファンドに計約52億9500万円を出資したが、現在の資産価値は「ほとんどない」(代理人弁護士)という。58億円余の賠償請求額の算定には弁護士費用を含む。 証券取引等監視委員会などによると、アール・ビー社は、業務上横領の罪に問われている基金の元事務長坂本芳信被告(56)の指示で、投資先企業に上場見込みがないのに「上場される」などとする虚偽の報告書を作成。報告書を受け取ったSG信託銀行などがアール・ビー社のファンドに投資した。県警は詐欺容疑でアール・ビー社を捜査している。 28日、長野市内で記者会見した基金の中川信幸理事長は「基金財産に著しい損害を与えたSMBC信託銀行に対し、法的、社会的責任を徹底して追及する」と述べた。 SMBC側は取材に「訴状を受け取っていないのでコメントは差し控える」とした。 金融庁は12年10月、SG信託銀行やユナイテッド投信投資顧問(現日本アジア・アセット・マネジメント)、スタッツインベストメントマネジメント(いずれも東京)の3社に対し、アール・ビー社などファンド運営会社を監視する義務を怠っていたとして、それぞれ1~3カ月の一部業務停止を命じた。 基金側は13年7月、日本アジア・アセット・マネジメントに約9億9500万円の損害賠償を求めて東京地裁に提訴し、係争中。スタッツ社とは、資産の現金化に向けて「調整中」という。坂本被告に対しては計2億5500万円の損害賠償を求めて長野地裁に提訴、請求通りの支払いを命じる判決が確定している。(長野県、信濃毎日新聞社)
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