4月の消費税増税に向け、国土交通省がタクシーの運賃改定の方針を示したことを受け、県内119社が加盟する県タクシー協会(長野市)は30日、初乗り運賃は据え置き、初乗り分の走行距離を短くして実質的に値上げする方針を認めるよう求める要望書を北陸信越運輸局長野運輸支局(同)に提出した。初乗り運賃の値上げによる客離れを警戒しての判断だが、加盟各社は利用者への影響を測りかねている。 北陸信越運輸局(新潟市)の自動車交通部によると、国交省の方針では、増税に合わせて約2・86%分を転嫁し、10円単位を基本に値上げできる。ただ、地域の業界団体の要望に応じて、例外的に初乗り運賃は変えず、初乗り運賃で走る距離を短くして実質値上げする方法も認めた。どちらの運賃設定をするかは各社が単独で判断できない。 現在、特別な審査をせずに事業者に認める自動認可運賃は、長野市の大部分の区域や千曲市、埴科郡坂城町の「長野県A地区」で初乗り(1・5キロまで)が670~710円、それ以外の県内の「長野県B地区」が同650~700円。各社はその範囲内で初乗り運賃を決めている。 県タクシー協会の大日向正英専務理事は「初乗り運賃が上がるとお客さんの印象が違う。タクシーの利用を控えるようになると困る」と説明。北信タクシー(須坂市)の駒津健一社長は「初乗り運賃が高くなると客足が遠のく」とし、中央タクシー(長野市)の宇都宮司社長も「ワンメーターを目安に乗るお客さんもいる。利用客の減少が課題になっている中で、走行距離を短縮する方が良いのではないか」と話す。 一方、戸惑うタクシー会社もある。中信地方の会社の担当者は「初乗り運賃が同じでも値上げに違いはない。走行距離による改定だとお客さまに分かりにくい」と心配。さらに「消費税率が8%から10%に上がることも考えると、距離で調整するのはまた大変になる」と指摘する。 同運輸局自動車交通部によると、県タクシー協会が示した方針の是非を判断した上で、距離や加算方法を試算。加盟各社などが集まる地域協議会などで試算を示して意見を聞いた上で、2月末に正式に決定する。 県内のタクシー業界は、規制緩和による新規参入もあって競争が激化。改正タクシー事業適正化・活性化特別措置法が今月27日に施行され、車両数の多い地域は、引き続き減車を求められることも予想されている。(長野県、信濃毎日新聞社)
↧