金融機関のインターネットバンキング利用者のIDやパスワードなどが何者かに盗まれ、預金が別口座に不正送金された事件が昨年、県内で25件あり、被害総額は2670万円となって、統計を始めた前年の1件、400万円から急増したことが30日、県警生活環境課のまとめで分かった。今年1月も増加傾向で、29日現在で4件、480万円に上っている。同課は不正アクセス禁止法違反容疑などで捜査するとともに、県内の金融機関に注意を呼び掛けている。 警察庁のまとめだと、全国の警察が昨年認知した同様の事件は1315件、被害総額は約14億600万円で、ともに過去最悪。件数はこれまで最悪だった2011年の約8倍、被害額は約4・6倍にまで増加した。 パソコンをウイルスに感染させ、IDなどを盗む手口が多く、警察庁の担当者は「犯行グループがウイルスを進化させたことなどが原因ではないか。ネットバンクを利用する際に普段と違う操作を要求された場合にはおかしいと思ってほしい」としている。 県警生活環境課によると、県内の被害者のパソコンは何らかの理由でコンピューターウイルスに感染していた。被害者はネットバンキングを利用しようとした際に現れた偽の入力画面に、パスワードなどを入力し、情報を盗み取られていた。 犯人はこの情報を使って被害者になりすましてネットバンキングを利用し、被害者の預金口座から別人の口座に現金を振り込んでいた。振込先はすべて国内の金融機関の口座で、外国人名義が多いという。 警察庁によると、全国の昨年1年間の被害者は全都道府県に住む32銀行の利用者。ゆうちょ、みずほ、三菱東京UFJ、楽天、三井住友の5行にある口座で被害総額の約86%を占めた。県内の金融機関では八十二銀行(長野市)の口座で被害があった。県内の事件の金融機関別被害件数と被害額は明らかにしていない。 全国の警察は、犯罪収益移転防止法違反や他人名義の口座を開設した詐欺などの疑いで34事件を摘発し、68人を逮捕、書類送検した。うち59人が中国人で、日本人が7人などだった。長野県警の摘発はなかった。警察庁は被害を防止するため、送金先として使われた口座情報を、全国銀行協会などを通じて各金融機関に提供。昨年8月から今年1月中旬までに少なくとも千以上の口座が凍結された。(長野県、信濃毎日新聞社)
↧