県建設業厚生年金基金(長野市)の多額横領事件で業務上横領罪に問われ長野地裁で公判中の元事務長坂本芳信被告(56)が職務に絡み、基金の投資先で巨額の損失を被った未公開株を取り扱った都内のファンド運営会社側から現金数百万円を受け取っていた疑いが強まり、県警は7日、収賄容疑で坂本被告を来週にも再逮捕する方針を固めた。 都内のファンド運営会社は「アール・ビーインベストメント・アンド・コンサルティング」。県建設業厚生年金基金は、2003年から08年の間に「アール」社を通じて未公開株に総額計約68億円を投資したが、その評価額は12年10月時点で40億円以上減少した。 坂本被告は事実上1人で県建設業厚生年金基金の資金を管理していたことが分かっている。県警は捜査の過程でアール社側から坂本被告に現金が渡ったことを突き止め、これまでに会社側の関係者から任意で事情を聴いた。 厚生年金保険法は、厚生年金基金の職員を公務員とみなすと規定している。捜査関係者によると、現金は関係者がアール社に在籍した06年ごろまでに坂本被告に渡ったとみられている。県警は、この現金が投資に絡む謝礼だった疑いを強めている。 収賄罪は公訴時効が5年だが、坂本被告は10年9月から昨年11月までタイに逃亡し、時効が停止しており、県警は立件可能と判断した。一方で贈賄罪は公訴時効(3年)が成立しており、慎重に裏付け捜査を進めている。 坂本被告は、10年5月から9月までの間に県建設業厚生年金基金の資産計3億円余りを着服したとして業務上横領罪で起訴された。総額23億円余の使途不明金について全額を着服したと供述しており、県警は余罪を順次、追送検する方針だ。 捜査関係者によると、坂本被告は着服を繰り返した理由について、アール社側から都内の高級クラブなどで接待を受けるうちに、「自分でも遊びたいと思い、横領を始めた」などと供述している。(長野県、信濃毎日新聞社)
↧