松本市安曇の乗鞍高原にある「一の瀬園地」に草木が茂って荒廃したため、地元・大野川区などが来年度からヤギやヒツジを放牧して再生することを検討している。同園地は中部山岳国立公園の一角にあり、乗鞍岳(3026メートル)を背景にした牧歌的な風景を取り戻す試みだ。 一の瀬園地の広さは約40ヘクタールで、大半を所有する大野川区が数年前まで牧場を経営していた。経営難などを理由に数年前に閉鎖すると植物が生い茂り、観光客に人気があった乗鞍岳の眺めも損なわれたという。 人手による伐採では再生、維持ができないとして、2011年に同区や市、観光関係者らで発足した「乗鞍高原再生計画実施検討会議」がアイデアを練っていた。 検討会議の計画では、敷地内4ヘクタールを柵で囲んでヤギやヒツジを放牧し、草や木々の若芽を食べさせる。松本市は、16年度までかけて放牧などによる環境への影響を調査する予定。市の来年度当初予算案には約200万円を計上した。 一の瀬園地は標高約1500メートルで雪が多く、冬季の動物の管理方法や人手の確保などが課題という。 大野川区長の奥原満登さん(67)は、「景観を取り戻すだけではなく、ヤギなどを観光資源にする仕組みも考え、観光の盛り上げにつなげたい」と期待。市山岳観光課は「観光名所である草地や景観が戻れば新たな再生モデルとなる」と話している。(長野県、信濃毎日新聞社)
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