上伊那地方でニホンジカ駆除に携わる伊那市高遠町の高遠町猟友会長山田勉さん(69)が、「安全で安心な」くくりわなを開発した。自動車整備士の仕事の傍ら約15年間わな猟をしてきた技術と経験を生かし、ばねの力を抑えたわなを自作。高齢者や女性でも扱いやすく、誤って人が掛かっても容易に外せるという。 くくりわなには、ばねに通したワイヤと、踏み板がある。踏み板の周囲にワイヤの輪を掛け、ばねを縮めた状態に固定して設置。動物が板を踏むとワイヤが外れてばねの力で輪が締まり、脚が抜けなくなる。 山田さんによると、開発したわなはステンレスの軟らかいばねを使用。鉄のばねを使う従来品の半分以下の力で仕掛けられる。輪が締め付ける力も3分の1以下。誤って人が掛かっても手で輪を広げて外せる。動物にも必要以上の苦痛を与えないという。 踏み板は四角形で縦24センチ、横18センチ。従来の円形の踏み板より面積が広い。ばねの力を抑えた分、ワイヤ同士の接触部分の摩擦を少なくし、動物が掛かった時に輪が締まる速度が落ちないようにした。ばねを縮めた状態で持ち運べて、設置作業も楽だという。約2年前から地元で使って実績を上げ、昨年4月に実用新案登録。「信州トラップやま」の名で約千個を販売した。 山で子どもや高齢者が誤ってわなに掛かることがあるといい、安全で捕獲率が高いわなを目指し、約4年前から自宅の工場で金属や木を加工。「危険性を1%でも少なくしたい」と今も新製品の試作を重ねている。 高遠町猟友会が属する上伊那猟友会はわなによる鹿の捕獲に力を入れており、わな免許を持つ猟友会員は年々増えている。県内外のわなの講習会でも教える山田さんは「1頭でも多くの鹿が捕れるよう自分の知識と経験を役立てたい」と話す。信州トラップやまは1個8千円(税込み)。問い合わせは山田さん(電話0265・94・2873)へ。(長野県、信濃毎日新聞社)
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