カウントダウンを終え、ごう音を残して飛び立つH2Aロケット23号機。28日未明、信州大(本部・松本市)が県内企業と協力して開発した信州製超小型人工衛星「ShindaiSat(シンダイサット)」(愛称・ぎんれい)が宇宙へ旅立った。鹿児島県・種子島の宇宙航空研究開発機構(JAXA)種子島宇宙センターに駆け付けた学生や協力企業関係者は喜びにあふれ、信州でも学生らがネット中継で見守った。 「きれいだ。輝いている」。ぎんれい本体の材料などを研究した信大大学院修士1年春日翔平さん(23)は、打ち上げ台から約3・6キロの展望台でロケットを見つめた。打ち上げ後、開発した小型衛星が搭載された他の大学の学生とともに記者会見。「かなり厳しい日程や条件、要求に応えてもらった」と、部品供給などで関わった県内企業に感謝した。 種子島には、自社の製品や技術を載せたぎんれいの旅立ちを一目見ようと、県内企業の担当者らも足を運んだ。 基板などのアルミ製ケースを供給した西山精密板金(岡谷市)の白木克昌さん(52)は「自分たちの作った部品が空から見守ってくれている」。締結部品を供給した太陽工業(諏訪市)の小平裕也さん(36)も「本当にこれからの励みになる」と話した。 長野市の信大工学部キャンパスでは、プロジェクト推進役の中島厚特任教授(66)と学生5人が集まり、JAXA配信のインターネット中継をスクリーンに映して打ち上げの瞬間を待った。カウントダウンが始まると、学生たちは緊張した面持ちに。打ち上げが成功すると歓声を上げた。 ネット中継は、ぎんれいの分離を確認する前に終了。その後、現地の春日さんから、無事分離できたと報告を受けた中島特任教授は「これでほっとしました」。ぎんれい本体の設計や内部の組み立てを担った工学部4年の小林夏樹さん(23)は、今春から社会人になるため「学生時代の最後のいい思い出になった」と感極まる様子で話した。 一方、春日さんの出身校、駒ケ根工業高校(駒ケ根市)でも生徒や教員計8人が中継映像を見守った。同校は、今回の衛星開発に携わる企業などでつくる「信州衛星研究会」の法人会員で、授業で宇宙や人工衛星について学び、全国工業高等学校長協会による小型人工衛星打ち上げ計画にも参加している。 映像を見つめた同校3年の久木健之介君(18)は「駒工の先輩も携わった衛星が無事に打ち上げられ、誇りに思う」と話した。(長野県、信濃毎日新聞社)
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