東日本大震災から11日で3年。長野県内には当時、東北地方の拠点が被災した企業もあり、各社は業務の早期復旧手順などを定める事業継続計画(BCP)づくりや拠点の耐震化に本腰を入れてきた。首都直下地震や南海トラフ地震の被害想定も示され、震災への備えが進む一方、2月の豪雪では東信地方などで操業停止に追い込まれる工場もあった。「想定外」のリスクにどう備えるか、県内企業は新たな対応を迫られている。 工作機械製造のシチズンマシナリーミヤノ(北佐久郡御代田町)は、大震災で北上事業所(岩手県北上市)などが被災し、BCPを13年1月に見直した。新たなBCPは、従業員の安否確認、拠点やインフラの被害把握に始まり、外注業者や顧客、販売代理店の被災状況の確認まで情報収集の範囲を広げた。 ただ、2月の豪雪では計画通りにいかない場面も。携帯電話などのメールのシステムで、従業員への出社指示の伝達で一部混乱が起きたといい、中島圭一社長は「教訓を次に生かしていく」と話す。 ノイズ除去フィルターなど製造の双信電機(佐久市)は、豪雪で浅間工場(同)などを臨時休業とし、振り替え出勤などの対応を取った。拠点の耐震補強工事などは済ませているが、まだBCPはなく「早期策定に向けて準備中」(経営企画室)とする。 大震災で福島県内からの部品納入が一時止まった経験から、部品や加工業者のリスト化を進めるセンサー開発のマイクロストーン(佐久市)。今回の豪雪による物流の影響はなかったが、自社製品の配達ルートが遮断された場合の本格的な対応はこれからで、白鳥典彦社長は「迂回(うかい)ルートを示したマップを作り直さなければいけない」と話す。 流通各社も対応の見直しを進める。綿半ホールディングス(飯田市)は大震災後、従業員と家族の安否確認システムを強化し、社内備蓄品を拡充。だが、豪雪時に車で移動中の従業員2人が山梨県内で3日間立ち往生したこともあり、大雪の際の連絡手段確保などBCPの見直しを始めた。村田清史秘書室長は「県内に拠点を構える以上、大雪のリスクを踏まえたBCPにしないといけない」とする。 マルイチ産商(長野市)も大震災後、大規模地震を想定してBCPを強化。しかし、豪雪では県外からの搬入が滞り、一部商品が店頭に並ばなかった。調達や配送など物流面の対応をまとめたマニュアル見直しの検討を始めており、「想定外を想定内にしなければいけない」(経営企画部)としている。(長野県、信濃毎日新聞社)
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