安曇野市穂高有明の鈴木誠三さん(72)、早苗さん(65)夫妻が、信州製超小型人工衛星「ShindaiSat(シンダイサット)」(愛称・ぎんれい)のプロジェクト成功を願い、キルトの壁掛けを作った。誠三さんは航空宇宙技術研究所(現宇宙航空研究開発機構)の元研究者で、ぎんれいの開発・運用に携わる県内企業などでつくる「信州衛星研究会」の個人会員。誠三さんの発案で、キルト作りが得意な早苗さんが手縫いで完成させた。 誠三さんは、研究所で宇宙空間で使う材料の耐熱化や軽量化などを研究。小学生から「蚕は宇宙で繭を作れるか」と質問が寄せられたのをきっかけに、天蚕飼育が盛んな安曇野に足を運ぶようになった。2002年3月に退職後、都内から移り住んだ。 ぎんれいプロジェクトの推進役で、信州大工学部(長野市)の中島厚特任教授(66)が同じ研究所出身だった縁で、発足メンバーとして信州衛星研究会に参加。体調を崩して十分活動できなかったといい、「おわびも兼ねて壁掛け作りを妻に頼んだ」という。 壁掛けは約70センチ四方。ぎんれい本体と信州の山脈などを描いたシンボルマークを基に型紙を起こし、草木染した布などを使った。発光ダイオードの光でぎんれいと地上の間で情報をやりとりする超長距離の「可視光通信実験」は、四隅に銀色のビーズを縫い付けて表現。銀糸の波線で電波交信を表した。 保育士だった早苗さんは「共働きで、夫の仕事は『何に役立つの』という感じで関心がなかった」。県内企業が部品を供給し、学生が組み立てたぎんれいプロジェクトを知り、壁掛けも作ったことで「夫の仕事を少しは理解できた」と話した。 2月28日にぎんれいの打ち上げが成功し、誠三さんは「中島さんや学生は頑張った。長野のものづくり精神もすごい」と感激した様子。壁掛けは中島特任教授に贈り、衛星と交信する機器がある工学部キャンパスの一室に飾られた。中島特任教授は「多くの人に支えられてうれしい」と感謝していた。(長野県、信濃毎日新聞社)
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