県の「子どもを性被害等から守る専門委員会」は17日、最終となる第7回会合を長野市内で開き、青少年との性行為を処罰する淫行処罰規定について「これまでの対策の延長では子どもを性被害から守りきれない」などとして条例化が必要とする報告書案をまとめた。今後、インターネット接続できる携帯電話の利用販売をめぐる規制など表現の一部を修正し、年度内にも阿部守一知事に提出する。 全国の都道府県で唯一、淫行処罰規定を盛った条例に頼らずに県民運動で青少年育成に取り組んできた長野県の方向転換を促す内容。県民の多くは規制よりも教育の充実による対応を求めており、そうした意見とは逆行している。処罰で抑え込む発想の条例をつくることになれば、長野県が誇ってきた地方自治の貴重な営みを否定することになりかねない。 報告書案では、どんな行為を処罰対象とするかを示す「構成要件」について「県民にとって分かりやすい明確な構成要件の記載」を求めるとし、結論を見送った。処罰対象となる性行為の相手を他県と同様に18歳未満とするか、女性が結婚できる16歳より下とするかも「慎重に十分検討をして決定されたい」とするにとどめるなど曖昧さを残した。 携帯電話の利用の在り方については、インターネット接続に伴う危険性を販売事業者が保護者に十分説明すること、有害サイトへの接続を制限する「フィルタリング」を解除する際に保護者が理由書を事業者に提出することなどを条例で義務付けるよう提示。大人が保護者の同意を得ず深夜に青少年を同行して外出することも禁止する必要があるとした。 性教育は学校で教える内容に学習指導要領の制限があるとし、外部講師の活用や社会教育の必要性を指摘。インターネットなどのメディア・リテラシー(読み解き能力)教育を進めるため、市町村などと連携して人材育成を実施するよう求めた。被害者支援の点では、被害直後から産婦人科医療やカウンセリング、捜査関連の支援を1カ所で提供する「性被害者支援ワンストップセンター」の設置を提言した。 専門委は、県から「子どもを性被害等から守る効果的、具体的な方策の検討」を依頼され昨年5月に発足。大学教授や弁護士、産婦人科医など有識者15人で議論してきた。(長野県、信濃毎日新聞社)
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