東京電力福島第1原発事故の影響を避けた福島県の小中学生が、松本市四賀地区で寮生活しながら地元の小中学校に通う「まつもと子ども留学」の受け入れが21日、始まった。松本市に避難した人などが設立したNPO法人「まつもと子ども留学基金」が寮を運営。4月1日までに計8人が寮に入る。基金理事を務める福島県郡山市の種市靖行医師(49)は「子どもを安全な場所に移す取り組みは国がやるべきことだがやらない。松本の動きが全国に波及すればいい」と期待していた。 21日は、同県郡山市の小学校を20日に卒業した佐藤愛(まな)さん(12)が母友紀(ゆき)さん(41)と到着した。留学基金の植木宏理事長(43)が出迎えた。 愛さんへの放射線の影響を不安視した友紀さんは、愛さんを東京の医療機関で受診させ、医師から福島を離れて過ごすよう勧められたという。寮に着いた愛さんは「直感でここがいいと思った」とし、「家族と一生会えないわけではないので寂しくない。楽しく遊びたい」と話していた。 留学基金は、松本市に避難した人や同市の弁護士、種市医師ら9人で昨年設立。福島県内などで参加者を募り、松本市が提案した四賀地区で民家を借りて寮に改修した。寮費は食費を含め月3万円。子どもたちは四賀小学校や会田中学校に通学する。 福島県の病院で甲状腺の超音波検査などを手掛ける種市医師は、子どもを福島県から離れさせることについて「放射線が安全か、危険かの議論以前に、子どもを避難させたという親の安心感は何物にも代えられない」と説明。まつもと子ども留学は「経済的事情などで行動に移せない人の受け皿を、と作った」と話す。 福島県は2月、県民健康管理調査で子ども75人にがんの疑いが判明し、このうち手術を受けた33人にがんが確認されたと発表した。種市医師は「大人になって見つかるがんが今回の調査で発見されたとも、原発事故の影響でがんになったとも考えられる。今後も行う調査の結果を見ないといけないが、現状が安全ということではない」とした。 その上で「福島県は県外避難者に県内に戻るよう呼び掛けている。一方で、子どもが遊ぶ屋内施設が各地に開設され、福島県立医大も放射線の影響に対応する医療拠点の設置を計画し、母親たちの不安につながっている」と指摘した。(長野県、信濃毎日新聞社)
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