「林道からの斜面に長さ約100メートルほどの雪崩の跡が3本あった。ゲレンデ側から3本目の跡の近くに5人を見つけた」。北安曇郡小谷村の栂池高原スキー場の上部で21日に発生した雪崩事故。雪崩に巻き込まれた3人の救出に当たったスキーガイドの40代男性(北安曇郡白馬村)は発見した当時をこう振り返った。現場は吹雪で視界が悪い上、体感気温も強風でかなり低く感じたという。 21日午前11時すぎ、男性はスキー客2人と栂池高原スキー場のゲレンデ最上部付近にいた際、遭難現場を通ってきたと思われる山スキーヤーに雪崩の発生と人が巻き込まれたことを聞いた。そのままスキーヤーと現場の様子を見に行き、吹雪の向こうに5人を発見。引き上げられた2人のうち、千葉県長生郡の男性(70)は意識はあるものの衰弱して会話がうまくできない状態で、同県茂原市の男性(67)も顔が青ざめていたという。 スキーガイドの男性はスキーヤーや現場を通り掛かった別のガイドらと、2人に寝袋をかけるなどの応急処置をした。近くの山小屋関係者も毛布やお湯を持って駆け付けたという。その後、スキー場のパトロール隊が現場近くのゲレンデに圧雪車とそりを用意。午後1時までには負傷者2人を運び終えたという。 男性によると、雪崩は林道より50メートル以上高い斜面で発生していた。負傷者の死亡を知った男性は「悪天候や雪崩が発生しやすい状況を考えると、この日は山に入るべきではなかった」と肩を落とした。救出作業をしていた間、多数の山スキーヤーらが現場を通り過ぎていったという。 2人は救助用のボートで、救急車が待つ栂池高原スキー場のパトロールセンターまで運ばれた。午後2時ごろから2時半ごろにかけてセンターに到着し、それぞれ救急車で搬送された。 スキー場でゴンドラを運営する白馬観光開発栂池営業所の佐藤裕二総支配人によると、スキー場付近は18日に雨が降り、19日の朝にはアイスバーン状態に。21日の朝までに、標高約830メートルのスキー場ゴンドラ乗り場で約30センチ、遭難があった標高約1750メートル付近で60~70センチの降雪があった。「かなり雪崩が起きやすい状態。危険度を5段階で示せば、今日は1番危険な5だった」と唇をかんだ。(長野県、信濃毎日新聞社)
↧