飯田市の天竜川で川下り舟を運航する会社「天竜舟下り」(飯田市松尾新井)の舟造りが、下伊那郡高森町下市田にある同社造船所で進んでいる。舟は毎年春先に完成するため、くぎを打つリズミカルな音は地域に春の訪れを告げる風物詩になっている。 舟は全長約12メートル、幅は広い部分で約2メートル、深さ約60センチ。スギやヒノキの板で組み立て、約千本のくぎで固定する。川下りで船頭を務める舟大工暦20年以上の矢沢啓志さん(53)と、今年から本格的に加わった船頭の南島純さん(32)が製作を手掛けており、26日までの作業では舟側面の最上部にヒノキ板を、くぎで丁寧につなぎ合わせた。 「舟造りは手作業の上、材質も毎年異なるから同じものは二度とできない。毎年新たな発見があります」と矢沢さん。江戸時代から続くという舟造りは設計図がなく、勘が頼りの作業ということもあり、「若い人に伝統をすべて伝えていきたい」。南島さんは「矢沢さんのような舟大工になり、技術を受け継いでいきたい。初めて自分が造る舟なので、こいだ時にどう動くか今から楽しみです」と話していた。 舟は今後、防水と強度を増すため樹脂を塗装して完成。4月下旬ごろから運航に使われる予定だ。(長野県、信濃毎日新聞社)
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