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ヘリ「しんしゅう」引退 山岳遭難で活躍、25年で508人救助

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 山岳救助に活躍してきた県所有のヘリコプター「しんしゅう」が31日、県営松本空港(松本市)でラストフライトを行い引退した。1980(昭和55)年発足の県警航空隊で運用されたヘリの中では最長となる25年間稼働し、500人超を救助。航空隊の発足時からの唯一の隊員で整備士の山崎豊さん(65)はこの日が自身の退職とも重なり、危険な山岳環境で性能ぎりぎりの飛行を続けながらも無事故を貫いた愛機に感謝した。  バラ、バラ、バラ…。小気味よいローター音を響かせてラストフライトを終え、松本空港に戻ってきた「しんしゅう」。搭乗していた山崎さんは、地上に降り立つと名残惜しそうに機体を見つめた。89年に県が導入し、県警航空隊が運用。同隊の2機目のヘリだった。  「気候に合わせて微妙な調整が必要だった」と山崎さん。3千メートル級の山岳地は酸素濃度が薄く、推進力を得にくい。フルパワーでの飛行が増え、エンジンの負担は大きかった。山崎さんは毎回、入念に点検し、手作業で調整。コンピューター制御で、自動で異常を知らせる最近のヘリと違い、「整備士にとってやりがいのある機体」だった。  新しい機体と比べて、救助性能は劣る。救助用のワイヤウインチは一度に1人しか引き上げられない。悪天候や乱気流で現場の上空に長くとどまれず、遭難者を引き上げた後、救助隊員を残して、その場を離れたこともしばしばだった。  ただ、山崎さんは「トラブルは少なく、安心できる機体だった」と愛着を抱く。耐用年数の20年を超えても運用に支障はなく、飛行時間は計7320時間、救助者数は計508人を記録。県が今後、売却先を探す方針だ。  機体は毎日、隊員が磨き、この日も輝いていた。仕事を終えた山崎さんは、パイロットで隊長の高山徳恵さん(56)と感慨に浸った。高山さんが「無事飛んでくれてありがとうのひと言ですね」とつぶやくと、山崎さんは「これほど長く一緒に働くとは思わなかったよ。お疲れさまでした」と目頭を熱くした。(長野県、信濃毎日新聞社)


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