東筑摩郡麻績村麻の宮本地区に残る「みそ炊き小屋」を守ろうと、住民有志が再生に乗り出した。かつては共有の作業場として生活を支えていたが、時代とともに廃れ老朽化。住民らの手で修復し、みそ炊きの他、正月のわら細工作りなどにも使える地域の拠点にする考えだ。16日は8人が土壁塗りなどをした。 約20平方メートルの木造の建物内には直径75センチ、容量約50リットルの釜と、石で組んだかまどが二つずつ並ぶ。小屋は少なくとも70年前にはあったといい、すすけた土壁が往時をしのばせる。住民によると、1965(昭和40)年ごろまで盛んに使われていた。今はみそ造りを村内の加工場に委託しており、ほとんど使われていない。昔は「小屋」が各集落にあり、他地区にも残っているという。 屋根が傾き、戸が外れるなど建物の老朽化が進み、維持が困難になったため、修復して活用しようと有志12人がことし6月ごろ、「味噌(みそ)炊き小屋保存会」を発足。土台や柱を交換し、トタン屋根の塗装などをしてきた。 16日は崩した土壁の土を再利用。縄をない、ヨシを格子状に縛った上からこてで塗って壁を作った。壁が崩れるのを防ぐための腰板も設けた。今後、戸や椅子の設置などを進め、年度内に完成させる予定だ。 かつては4月下旬から5月初旬にかけてのみそ炊きの時季には、小屋をこぞって利用し、煮た大豆は近所にお裾分けし合ったという。この日縄をなった宮川浪雄さん(77)は「お祭り騒ぎでそれこそ毎日使っていた。いい匂いがしたなあ」と振り返る。 保存会長の宮川和平(かずひら)さん(64)も子どものころ母と小屋でみそを炊いた思い出があり「(近所と)競争で煮たもんだよ」。ことし5月に小屋の釜で大豆を煮て近所に配ったところ、みんな喜んでくれたという。 最近は世代を超えて集まる場がないと語る和平さん。「都会からのみそ炊き体験や釜を使った染色、バーベキューなどに気軽に使いたい。次世代につなげていければいい」としている。(長野県、信濃毎日新聞社)
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