国の規制緩和で今春から、狩猟免許がない人もわなを使ったシカなどの駆除(個体数調整、有害鳥獣駆除)に関われるようになり、県内で集落単位の「捕獲隊」の結成が相次いでいる。県がわなの購入補助などで支援していることもあり、県によると25市町村の36地域で既に結成されたか、年度内に結成予定。免許がない人は「補助者」として、わなの設置や見回りで協力している。 10月に4集落で捕獲隊ができた松本市中山地区。20人でつくる埴原(はいばら)南集落の捕獲隊員で、わな猟の免許を持つ小林征也さん(70)と「補助者」の田中稔さん(73)が、集落の外れを巡回していた。作動したのに取り逃がした「くくりわな」を仕掛け直す際、田中さんがワイヤを木に結んで手助けすると、小林さんは「2人だと格段に作業がしやすい」と息をついた。 埴原南の捕獲隊が狙うのはシカだ。中山間地域の中山地区では2009年度に集落と山林の間に防護柵を設け、コメ、大根、ニンジン、大豆といった農業被害額が半減。だが、柵のない場所から回り込んでくるシカが悩みの種だった。 埴原南では、10年秋から集落を代表して小林さんら3人がわなでシカの駆除を開始。常時仕掛けてあるのは8カ所ほどで、田中さんらも獲物の運搬などで協力してきた。ただ、田中さんは「規制緩和の前は大々的に手伝えず、免許保有者の負担が重かった」と話す。 環境省によると、従来、わなの設置や見回り、獲物の運搬などは免許を持つ人しかできなかった。ただ「増えすぎたシカなどを多く捕獲するには、免許保有者だけに頼れない」(環境省鳥獣保護業務室)として、鳥獣の保護などに関する指針を改め、4月から関係法令や猟具の講習を受けた後、免許保有者の監督下であれば免許のない人も従事できるようにした。 県内の野生鳥獣による農業被害額は、2011年度は8億5290万円と4年連続で減少。県農業技術課は「各地で防護柵の設置が進んだ効果」とするが、「被害は完全に防げず、被害額の水準は依然高い」とも話す。 県は2011~16年度に、県内のシカを推定約10万5千頭から3万5千頭に減らす計画。捕獲隊への期待は大きく、講習会の開催などでも支援している。捕獲隊の駆除対象はシカが多いが、木曽地方では主にイノシシ、安曇野市の北アルプス山麓では猿が対象という。(長野県、信濃毎日新聞社)
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