松本市中山地区で、地元ゆかりの民話「泉小太郎」を後世に伝える取り組みが始まっている。住民らでつくる実行委員会が、9月2日に初めての「祭り」を計画。11日は祭りを前に、民話について学ぶ講座が開かれ、関連する場所を巡った。実行委は、地域のために尽くしたと伝わる小太郎の物語を広く知ってもらおうと意気込んでいる。 泉小太郎は中山で暮らしていたという民話の主人公。昔、松本平は湖になっていて土地が狭く、人々は貧しい暮らしを強いられていた。湖の水を流して広い土地をつくろうと考えた小太郎は、竜の姿をした母親の背に乗り、力を合わせて岩を砕き、外に水を流した―という粗筋だ。 祭りは中山在住の児童文学者で、泉小太郎の絵本も出版している高田充也(みつなり)さん(84)が発案。ことし4月に始動した実行委の委員長を務める高田さんは「民話への理解を深める祭りの開催をずっと考えていた。辰(たつ)年に実現できてうれしい」と話す。 この日の講座では会場の市中山公民館に約50人が集まった。高田さんが民話について話した他、紙芝居上演もあった。バスで移動し、小太郎の産湯とされる池や、弘法山の麓にある竜にまたがった泉小太郎のブロンズ像も見学した。同市中山台の男性(75)は「ゆかりのある場所が地元にあるのは知らなかった。祭りも楽しみ」と話していた。 高田さんは「小太郎の民話は他者を思いやる心など、社会に必要な内容。活動を松本全体の活性化にもつなげたい」と話している。 9月2日の祭りは、ブロンズ像前で午前10時から。泉小太郎の人形劇や、中山小児童らの太鼓演奏などがある。問い合わせは実行委事務局(電話0263・58・5822)へ。(長野県、信濃毎日新聞社)
↧