小県郡長和町長門小学校の6年生31人が30日、同町古町の紙すき体験施設「信州立岩和紙の里」で、自分たちの卒業証書にする和紙をすいた。総合的な学習の一環で、これまでは原料のクワ科の木「コウゾ」は地元住民らが育ててきたが、今回初めて児童たちが栽培から参加。この日は草刈りや皮むきなどの苦労を振り返りながら、一枚一枚を真剣な表情で仕上げた。 同校では「郷土を愛する気持ちを育んでほしい」と、地元に伝わる「立岩和紙」を使い、約30年前から毎年6年生が卒業証書用の和紙をすいている。10年ほど前、地元有志でつくる「立岩和紙保存会」が同校近くの畑でコウゾを育て始めたが、鳥獣に荒らされ、うまく育たなかった。このため保存会は昨年春に畑の周りに柵を設置。当時5年生の児童たちと一緒に苗を植え、育ててきた。 児童たちはこの日、ステンレス製の網をはめ込んだ縦30センチ、横40センチの木枠に、皮を煮てのり状にしたコウゾを流し込んだ後、手に持ってゆっくりと前後左右に動かした。同施設職員の楓山(もみじやま)智幸さん(27)が「穴が開かないよう、コウゾはゆっくりと注ぐように」などと助言。和紙の右上に、校章を印刷した別の小さい和紙を付けてから乾燥させた。 清水光貴(こうき)君(11)は「木枠を動かすのは腕が疲れて大変だったけれど、卒業証書になるのが待ち遠しい」。太田守校長(57)は「地域の人の支えがなければ、栽培からの作業は実現できなった。子どもたちが地域の文化を大切にするきっかけになればうれしい」と話していた。(長野県、信濃毎日新聞社)
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