自分の銀行口座の通帳やキャッシュカードを他人に譲渡したなどとして、犯罪収益移転防止法違反などの疑いで逮捕、書類送検されるケースが県内で増えている。県警振り込め詐欺対策室によると、ことしは今月11日までに計52人に上り、昨年1年間(26人)の2倍に達した。譲渡された口座は振り込め詐欺などの振込先に使われ、詐欺被害者の届け出で譲渡側の摘発につながっている。同対策室は「振り込め詐欺の助長犯罪」と位置付けるが、犯罪との認識が薄いケースが少なくないという。 同対策室によると、摘発された52人の容疑は、カードなどを他人に譲渡した同法違反が28人、他人に譲り渡すことを隠して金融口座を開設したり、携帯電話を契約したりした詐欺が23件、その他が1件だった。 塩尻署が10日に同法違反(有償譲渡)の疑いで地検松本支部に書類を送った塩尻市の自営業の男(54)は、8月上旬に携帯電話に融資を持ち掛ける電子メールが届いたのが犯行のきっかけ。融資条件として示された通り、自分のキャッシュカードと暗証番号を書いたメモを都内の私設私書箱に郵送した。口座は県外で起きたオレオレ詐欺の振込先に使われたという。 同対策室は譲渡側の多くが譲渡の報酬を期待する小遣い稼ぎ感覚で、「犯罪意識が希薄だ」と指摘。ある容疑者は「逮捕されるほどの犯罪とは知らなかった」、別の容疑者は「まさか振り込め詐欺に使われるとは思わなかった」と供述したという。ただ、だまされて報酬を受け取れないケースが多いという。 県内ではことし、阿南署を除く21署がこうした「助長犯罪」を摘発。同対策室は、過去にヤミ金融などを使った人の名簿が流出し、それを元に振り込め詐欺グループが口座譲渡を持ち掛けるケースが多いとみている。 一方、最近は日本郵便のゆうパックや小包で送金させる詐欺の手口が増加。同対策室は、第三者名義の口座が入手しづらくなり、新たな現金授受の方法として郵送が悪用され始めたとみており、郵便事業者らと協力して注意を呼び掛けている。(長野県、信濃毎日新聞社)
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