自民党に政権が戻ることが決まった衆院選から一夜明けた17日午前、県内5小選挙区と比例代表北陸信越ブロックの当選者計10人は、記者会見したり、つじ立ちをしたりして、国会に臨む決意をあらためて表現した。それぞれの表情には、喜びと政権交代後の国政に携わる緊張感が同居していた。 「民主党は弱小政党になった。たたき直して再生させたい」。1区の民主前職、篠原孝さん(64)は、午前7時半すぎから長野市の長野駅前で通勤客らにそう訴えた。 9時から市内の事務所で記者会見し、「すがすがしい気持ちではない。同僚議員の落選の弁を聞いて悲しくなった」。党の政策決定のルールづくりに取り組み、脱原発に向けて日本未来の党などとの連携のつなぎ役となる考えなども明らかにした。 初当選した2区の自民新人、務台俊介さん(56)は午前7時半から、冷え込む松本市の松本駅前で街頭演説。「このきりっとした空気のような気持ちで国会に向かいたい」と、気持ちを新たにした。 事務所での会見では「喜びというより責任感をひしひしと感じている」。睡眠時間4時間ほどでも疲れは感じないといい、選挙戦で訴えた地域再生に触れて「地域を元気にする改革を急ぎ足で進める」と誓った。 民主新人のうち、全国でただ1人当選した3区の寺島義幸さん(59)は、午前9時前に北佐久郡立科町の事務所へ。当選を伝える信濃毎日新聞を読んで笑みを浮かべつつ、「まだ実感はない」と話した。 会見では「自民、民主は政権交代可能な二大政党。説得力のある提言をし、予算に反映させることは十分可能」と強調。支持者の電話に「(接戦で)ひやひやさせてすいません」と話し、あいさつ回りに出掛けた。 返り咲いた4区の自民元職、後藤茂之さん(57)は午前8時から諏訪市の事務所で会見。遊説で見せた笑顔は控えめで、山積する国政課題を前に「日本、地域の再生にしっかり取り組む覚悟」と緊張感を浮かべた。 自民単独で絶対安定多数を確保した点には「数にものをいわせる国会運営にしてはならない」。その後、木曽郡木曽町の事務所に向かい、支持者約20人と万歳をして喜びを分かち合っていた。 同じく返り咲きの5区の自民元職、宮下一郎さん(54)はブログに当選報告を書き込んだ後、伊那市の事務所へ。後援会幹部からはねぎらいとともに「景気回復が大多数の願いだ」と早速注文も受け、神妙な面持ちでうなずいた。 比例復活で初当選した5人のうち、自民新人の小松裕さん(51)は午前7時半から約1時間、長野市の長野駅前でつじ立ちした。支持者に祝福され、「これからがスタートです」と応じていた。 初当選したものの小選挙区で敗れ、「悔しさが9割、うれしさが1割かな」。それでも、「約8万人の有権者が自分に期待して投票してくれたことを重く受け止める」とし、医師としての経験を生かしたいと話していた。 自民新人の木内均さん(48)も午前7時半すぎから佐久市岩村田の交差点でつじ立ちをした。約1時間、通勤客らに頭を下げながら「比例代表だが、地域課題を一つ一つ着実に解決して私個人の信用を高める」と誓っていた。 祝福の電話が次々とかかる同市中込の事務所に戻ると、民主候補が当選した地元3区で「ねじれ現象が生まれた」とし、「与党議員の強みを生かし、決められる政治を進める」と語った。 日本維新の会新人の宮沢隆仁さん(57)は、午前8時から長野市平林の事務所で記者会見。「いつまでも喜んでばかりはいられない。国会で仕事をする覚悟が少しずつ出てきた」と話した。 維新の当選者が50人を超え、「相当な割合の人たちが改革を望んでいる」と分析。「1年生議員でも自分が思うことをどんどん発信し、スピーディーに仕事を進めたい」と意気込んでいた。 県内最年少の国会議員となった維新新人の百瀬智之さん(29)は、午前9時半から松本市の事務所で記者会見。「言ってきたことを正直にやっていきたい。何もない若者に託していただいた重みはとても大きい」と語った。 前夜は祝福の電話が相次ぎ、なかなか眠れなかったという。携帯電話にも友人から50件近い祝福メールが届き、「徐々に実感が湧いてきている」と笑顔を見せた。 みんなの党新人の井出庸生さん(35)は午前7時半、何度も街頭演説をしてきた佐久市の国道交差点へ。行き交う人に「期待に応えられるよう、国会でも全身全霊で戦う」と感謝の思いを伝えた。 当選を祝う電子メールや電話への返事で睡眠時間は2時間ほど。だが、「まだ何かを成し遂げたわけではない。訴えを実現するための舞台に上げてもらった。これからが勝負」と真剣な表情だった。(長野県、信濃毎日新聞社)
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