県内で裁判員裁判を開く長野地裁と地裁松本支部で、裁判員裁判以外の公判日程にゆとりがなくなり、判決日などが被告側の希望と合わないケースが増えている。従来は他の地裁支部で審理していた事件が裁判員裁判の対象(殺人や強盗致傷など)となって長野地裁、地裁松本支部だけが担当している他、裁判員裁判は可能な限り連日開く原則があることや、判決内容を話し合う評議に時間がかかることなどが理由。「(対象外の事件で)勾留が延び、被告が不利益を被る恐れがある」と指摘する弁護士もいる。 「もう少し(判決の)期日を早くできませんか」「すみません。裁判員裁判の日程が入っていてこの週は無理です」。11月下旬、長野地裁で開いた不正競争防止法違反事件の公判。判決日を決める際、弁護人と裁判官がこんなやりとりをした。弁護側は2週間後を求めたが、裁判員裁判の審理も担当する裁判官の予定や法廷の空き状況などから約1カ月後に決まった。 この事件の弁護人の1人、町田清弁護士(佐久市)は、起訴から初公判までの期間も延びていると話す。従来は1カ月程度だったが、この事件は長野地裁で裁判員裁判が続いていた時期に重なり、約2カ月後になった。被告は起訴内容を認めて初公判直後に保釈されており、町田弁護士は「初公判が早ければ、保釈も早かった」とする。 判決日が希望より先に延びたことについても「被告人には迅速な裁判を受ける権利がある。裁判員裁判の導入で、別の事件の被告人にしわ寄せがいくことは避けなければならない」と話した。 こうした指摘に、長野地裁は「各裁判官が適正で迅速な事件処理に努めている」と説明。合議ではなく、裁判官が1人で担当する県内の刑事裁判で起訴から判決までにかかった期間は、裁判員制度開始前の2008年が2・9カ月、開始後の11年は2・6カ月に短縮されたと強調する。 ただ、裁判員裁判の公判や評議がある日は他の公判日程は入れられず、その結果、10件を超える公判が集中する日もあって、審理日程が被告側の希望と合わないケースが多いとされる。 県弁護士会刑事弁護センター委員長の征矢芳友弁護士(松本市)は「執行猶予付き判決が予想される裁判では、被告が早く判決を受けて(勾留施設を)出たいと思うのは当然」とし、迅速な裁判のためには「裁判官を増やすことが必要だ」と訴える。 長野市の弁護士の1人は「弁護人の都合で期日が延びることもある。裁判所と弁護人が歩み寄り、被告人が不利益を受けないように気を配るべきだ」と話している。(長野県、信濃毎日新聞社)
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