地球温暖化に伴う近年の暖冬傾向で、県内の冬の寒さを利用した茅野市など諏訪地域の伝統産業「角寒天」作りに、うまく凍らなかったり、作業できる日数が短くなったりする影響が出ていることが19日、県環境保全研究所の畑中健一郎研究員(温暖化対策)らの調査で分かった。県内には寒さや雪を利用した伝統産業が他にもあり、同研究所は今後、温暖化が与える影響について本格的な調査に乗り出す。 同研究所によると、県内の平均気温は過去100年に1度余上昇。温暖化対策を取らず、高い経済成長が続いた場合には今世紀末までに年平均気温が2~5度上がるとの試算があるとする。こうした傾向を踏まえ同研究所は、冬の寒冷な気候や雪などを利用した県内伝統産業として、角寒天と飯山市の「内山紙」製造を選定。ことし2~3月にかけて生産者に対する聞き取りを実施した。 角寒天は、冬の低温と日中の晴天を生かし、生寒天を凍らせたり解かしたりしながら約2週間かけて乾燥させる。聞き取りで生産者からは、近年の暖冬傾向で生寒天がうまく凍らないケースが出たり、作業できる期間が短くなったりするとの話があった。 角寒天の生産過程で、生の寒天が凍るには夜間気温が氷点下7~10度に下がる状況が3日間程度続くことが必要。県寒天水産加工業協同組合(茅野市)の小池隆夫組合長(67)は取材に「温暖化の影響は出ている。短期間で凍結しないと品質が落ちてしまうし、作業できる期間も確実に短くなっている」と話す。 一方、経済産業省の伝統工芸品の指定を受けている内山紙は「雪ざらし」が重要な工程。原料となるコウゾを雪上に広げ、その上からまばらに雪をかける。日光で雪が解け、紫外線が当たることで漂白が進むという。 同研究所の聞き取りでは、生産者から、暖冬で雪が極端に少ない年には雪ざらしの作業に支障があったとの回答もあった。内山紙協同組合の阿部一義理事長(63)は取材に「今のところそれほど大きな影響は出ていないが、降雪量が少なくなれば作業への影響は出るだろう」とする。 畑中研究員は「伝統産業を守るためには、需要減少や後継者不足などの課題に加え、温暖化にどう対処したらいいのかを考える必要がある」と指摘。今後は、工芸品や酒造りなどにも調査対象を広げたいとしている。(長野県、信濃毎日新聞社)
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