木曽郡木曽町の自治協議会などの金を横領し、隠蔽(いんぺい)のために町日義支所に放火して全焼させたとして、業務上横領、非現住建造物等放火などの罪に問われた同町教育委員会日義教育事務所の元係長田口俊久被告(47)=同町三岳、懲戒免職=に、地裁松本支部(二宮信吾裁判長)は26日、懲役5年(求刑懲役6年)の判決を言い渡した。 判決で二宮裁判長は、被告は支所の重要性を十分理解していたのに放火を決意し、油類をまくなど犯行態様は極めて危険だと指摘。支所全焼による1億円以上の財産的損害を弁償できる見込みはなく、行政サービスに多大な影響を与えた点は看過できないとした。一方、業務上横領については、全額弁済した点や犯罪歴がなく反省している点を酌んだ。 検察側は判決を「適正だ」と評価。被告の弁護人は判決後に被告と相談したとし、控訴は予定していないとした。 判決によると、2010年4月と7月に町日義地域自治協議会教育文化部会の口座から計60万円を横領。隠蔽するため、ことし4月6日に予定されていた会計監査を延期させようと、同日午前1時20分ごろ、町日義支所1階事務所に放火して全焼させた。6月22日には横領した金を弁償するため、管理していた木曽郡公民館運営協議会名義の口座から52万円を横領した。 田口被告はこの日、判決文読み上げを身動きすることなく聞き入った。裁判長が判決理由を読み終えて「以上が内容です」と告げると、軽くうなずいていた。 同町の田中勝已町長は判決後、「町民の貴重な財産を灰にして多額の損害を発生させ、町や職員に対する町民の信頼を根底から覆す重大な事件であり、当然の判決。あらためて町民の皆さまに深くおわびする」とのコメントを出した。(長野県、信濃毎日新聞社)
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