厚生年金基金(厚年基金)の積立金不足が、国から預かった公的年金部分に食い込む「代行割れ」の問題で、県内に事務所を置く10基金のうち8基金が代行割れで、いずれも厚生労働省が11月に示した代行割れ部分の穴埋め負担を軽減する新特例案の対象外とみられることが28日、分かった。信濃毎日新聞が同省への情報公開請求で入手した県内10基金の11年度決算で判明した。特例案の適用条件が厳しく設定されたためで、現状では県内基金が自力で穴埋めする必要がある。 特例の内容や適用条件は、国の専門委員会の論議を経て変わる可能性がある。穴埋め負担軽減には厚年基金と関係のないサラリーマンなどが加入する厚生年金を充てるが、国は厚生年金本体への影響を最小限に抑えたい方針。対象が拡大されるかどうかは不透明だ。 厚年基金は、AIJ投資顧問(東京)による年金資産消失事件などの影響で財政が悪化。県内10基金の11年度決算によると、県機械工業(松本市)と県自動車整備(長野市)を除く8基金が代行割れで不足金は総額約360億円。純資産が公的年金の代行に必要な「最低責任準備金」を下回っており、県建設業厚年基金(長野市)が180億円など巨額の不足金を抱えている=表。 不足金は基金解散時に加入企業が協力して返済するのが原則だが、中小企業への過度な負担を避けるため、同省が負担軽減を検討。返済額に上限を設けるか、分割返済期間を延長するかの2案を盛り込んだ新特例案を、11月の専門委に示した。 適用には厳格な条件があり、掛け金の増額や給付引き下げを実施したことに加え、掛け金を負担する加入員に対する年金受給者の割合(成熟度)が2を超えていることなどを挙げた。県内10基金の成熟度は全て2を下回っている。 同省は11年度決算を基にした試算で、特例適用は全国で最大8基金と想定しているが、基金名は明らかにしていない。同省企業年金国民年金基金課は「厚年基金に入っていない厚生年金加入者の理解や、特例を受けずに既に解散した基金との公平性などを考慮し、対象は絞る必要がある」としている。(長野県、信濃毎日新聞社)
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