松本市の柔道教室で2008年に当時小学6年の沢田武蔵君(16)=松本市波田=が練習で投げられ、重い障害が残った事故で、沢田君の両親が9日、投げ技をかけた元指導者男性(39)について、起訴議決を求める意見書を長野検察審査会に提出した。両親は事故は予見可能だったとし、元指導者を業務上過失傷害罪で不起訴(嫌疑不十分)とした長野地検の判断を批判した。 松本署が業務上過失傷害容疑で書類送検した元指導者について、長野地検は昨年4月に不起訴処分とし、沢田君の両親の申し立てを受けた同検審が同7月に「起訴相当」と議決。同地検は再捜査したが、同12月に「予見可能性を認めるのは難しい」として再び不起訴処分とした。同検審が再度審査しており、市民から選ばれた審査員11人中8人以上があらためて「起訴するべきだ」と判断(起訴議決)した場合、裁判所指定の弁護士が検察に代わって強制起訴する。 両親はスポーツによる頭部損傷に関する書籍などを資料として提出。意見書では、この書籍に脳は強く揺さぶられることでも損傷を受けることがある―との記述があると指摘。書籍は事故当時、少なくとも8千部発行され、スポーツ指導者に普及していたと訴えた。また、指導者がかけた「片襟の体落とし」は危険性が高く、「指導の域を超えた異常かつ暴力的な行為」だったと主張した。 県弁護士会館(長野市)で会見した沢田君の父博紀さん(40)は「大の大人が子どもを投げ飛ばせばどうなるかは分かるはず。知らなかったでは済まされない」と元指導者を批判。同検審に、両親の意見陳述の機会を設けるよう求めたことも明らかにした。 長野地検の小池充夫次席検事は「(両親が)希望した処分と違うので当然の不満と思う」とした上で、「処分を考え直すことはない」と述べた。(長野県、信濃毎日新聞社)
↧