諏訪郡富士見町境の井戸尻考古館は17日から、同町落合の唐渡宮(とうどのみや)遺跡から出土した縄文時代中期(約4200年前)の深鉢形の「人体絵画土器」を期間限定で展示する。底部近くに、出産する女性とみられる絵が毛筆で描かれているのが特徴。同館によると、縄文時代の土器や壁画で出産を描いた図は他に例がないといい、「国宝級の価値がある」とする。 土器は高さ63センチ、口径50センチ。女性の絵は高さ23センチ、幅13センチほど。同時期の土偶に似て、短い腕が左右に突き出し、両脚を大きく開いて立ち、女性器から液体のようなものが流れ出て地面に達している。黒い顔料で素早い筆致で描かれ、顔は黒く塗りつぶされている。同館は「死を表現している」とみている。 土器は1968(昭和43)年、同遺跡を通る農道の拡幅工事の際、完全な形で出土した。住居跡から離れた位置にあり、描かれた図から、出産をして亡くなった女性の遺体を納めた可能性が高いという。煮炊きに使われた形跡も見られるため、埋葬に転用し、絵は後から描かれた可能性があるという。 絵を描くのに使われた顔料が何かは不明。退色の恐れがあるため、普段は収蔵庫に保管しており、展示は7年ぶり3度目となる。樋口誠司館長(55)は「次はいつ展示できるか分からないので、この機会にぜひ見てほしい」と来館を呼び掛けている。 展示は3月末まで。月曜休館。問い合わせは同館(電話0266・64・2044)へ。(長野県、信濃毎日新聞社)
↧