松本市出身の日本画家西郷孤月(こげつ)(1873~1912年)の研究などに取り組む県民有志らでつくる「孤月会」が、孤月の歩んだ人生や信州との関わりをまとめた「孤月研究ノート」を発刊した。2012年が没後100年だったことを記念。作品以外の遺品が少なく、「幻の画家」とも言われる孤月を調べた貴重な記録だ。 孤月は松本藩士・西郷績(いさお)の長男として誕生。東京美術学校(現東京芸大)に1期生として入学し、横山大観、菱田春草、下村観山らとともに日本画家橋本雅邦(がほう)門下生の四天王と称された。1898年には日本美術院創設に尽力。才能を認められたが、大観らが国内外に活躍の場を広げた一方、孤月は画壇の表舞台から次第に影を潜めていった。 「ノート」には、孤月が県内各地で自然と向き合った足跡のほか、大観が1906年に諏訪地方に滞在中の孤月に宛て上京を促すよう書いた手紙や、孤月直筆の手紙などを載せた。 1993年に発足した孤月会が、研究を積み重ねてきた成果をまとめた。同会会長の吉野俊さん(86)=松本市=は「謎が多い孤月の後半生が研究課題だったが、少しは解明できたのではないか。市民に孤月を見直してもらうきっかけになってほしい」と話す。 希望者に1冊2500円で販売する。問い合わせは同会事務局の南信ヤクルト販売会社内孤月会係(電話0263・25・8912)へ。(長野県、信濃毎日新聞社)
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