飯田市上村程野で、国内最大級の断層「中央構造線」が地表に露出している場所(露頭)を、同市美術博物館の専門研究員が新たに見つけた。断層を境に横方向にずれたとみられる地形を伴っていることも確認。一帯の中央構造線が活断層であることを検証するための貴重な資料になりそうだ。 ◇◇◇ 飯田市美術博物館の専門研究員、坂本正夫さん(65)=飯田市上郷黒田=が18日までに、国内最大級の断層「中央構造線」が地上に露出し、観察できる新たな「露頭」を飯田市上村程野で見つけた。断層を境に横方向にずれたとみられる地形も伴っており、この地域の中央構造線が活断層であることを示すという。近畿地方などに比べ、県内の中央構造線は活断層としての研究が進んでおらず、活動度などを解明する上で重要な発見となりそうだ。 坂本さんによると、県内の中央構造線の露頭は下伊那郡大鹿村の「安康露頭」や「北川露頭」(ともに県天然記念物)、伊那市長谷の「溝口露頭」などが知られているが、いずれも活断層であることを示す地形を伴っていない。 坂本さんは2011年夏、三遠南信道矢筈(やはず)トンネル(下伊那郡喬木村―飯田市上村)の東方の山林内で新たな露頭を発見。近くには南北方向の中央構造線にほぼ直角に交わる小高い尾根があり、中央構造線を境に東側が南へ、西側が北へ膨らんでいた。 坂本さんは、構造線を境に西側が北へ動く「右横ずれ」のために尾根がこうした形になった、と判断。「飯田市上村、南信濃両地域の中央構造線が活断層であることを裏付ける証拠」とみている。 坂本さんは新たな露頭の周辺で、中央構造線の運動で動いたとみられる別の尾根も確認。同市南信濃の中央構造線の調査では、長さ1~2キロの断層が斜めに並ぶ「雁行(がんこう)配列」になっていることも突き止め、中央構造線が活断層であることを示すデータとして昨年の日本地質学会で発表した。新たな露頭周辺を含め、いずれも右横ずれとなっており、データに一貫性があるという。 信大全学教育機構の大塚勉教授(構造地質学)は、新たな露頭について「尾根の変形が(断層による)変動地形なら、近くに露頭もあることから活断層である確実度が高まったのではないか」と話す。 一方、産業技術総合研究所活断層・地震研究センター(茨城県つくば市)の吉岡敏和・活断層評価研究チーム長は「活断層の認定には地形や地質の総合的な判断が必要」と指摘。今回の露頭の発見だけでは一帯の中央構造線が活断層かどうか判断するのは難しいとし、データを積み重ねて議論する必要がある、と話している。(長野県、信濃毎日新聞社)
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