土砂災害防止法の土砂災害警戒区域内で30人以上が入所する社会福祉施設を新設・増築する場合、原則として県の補助金交付対象外とする取り組みについて、県は従来方針より1年遅らせて2014年度から始める。市町村への周知期間を取るため。 同区域では建物新築などの開発規制がない。県補助金に制限を設け、災害時に避難が難しい高齢者が入所する特別養護老人ホームなどを区域外に誘導する狙いだ。県健康福祉部によると、09年に山口県内で特養入所者が豪雨による土石流の犠牲になったことなどを受けた対応で、全国的にも珍しい取り組みという。 制度変更に伴う経過措置として、14年4月1日時点で用地決定済みなど整備計画が固まっている施設は適用外とする。やむを得ず同区域内で新築・増築をする場合、予定地の市町村長による整備要請の意見書や、安全配慮確約書の提出、避難計画の安全策や計画に即した設計図の提示などを求め、県と事前協議するよう義務付ける。 20床以上の病院についても同区域内で新築、増築する場合、原則補助しない方針。ただ、中山間地域などでの医療提供で建設が避けられない場合には一定の安全性の確保を条件に補助する。 同部によると、昨年4月1日時点で同区域と土砂災害危険箇所にある災害時要援護者施設は624カ所。うち同区域内で30人以上の入所施設(病院含む)は75カ所だった。県は本年度、特養を新設する場合、入所定員1人当たり324万余を補助している。 県の方針をめぐっては、昨年8月の県市長会総会で岡谷市などから「地域の実情を考慮してほしい」などと慎重な対応を求める要望が出た。同市は「一律に規制するのではなく、協議の上で認められれば考慮されるということで納得した」(介護福祉課)としている。(長野県、信濃毎日新聞社)
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