諏訪湖の漁獲量回復に向け、夏の湖底で起きる貧酸素状態を解消する取り組みを続ける諏訪湖漁協などは8日、微小な気泡「ナノバブル」で酸素を増やす水槽実験の結果を公表した。酸素量を増やす一定の働きがあることが確認できたとして、5月中旬に湖での実験に入ると決めた。 ナノバブルの直径は1万分の1ミリ。水中に長くとどまるため効率良く酸素を送れる特長があるという。同漁協は、泡の発生装置を開発した液晶表示装置製造のエーシング(諏訪市沖田町)の協力を得て、昨年10月から3カ月間、諏訪郡下諏訪町の県水産試験場諏訪支場にある容量約20トンの水槽内で、酸素量の変化や魚への影響を調べてきた。 水質に詳しい信州大山岳科学総合研究所の宮原裕一准教授(46)が結果を分析。この日は諏訪市渋崎の諏訪湖漁業センターで漁協組合員ら約20人が報告を聞いた。宮原准教授は、実験前は水1リットル当たり10ミリグラム前後だった酸素が、装置の稼働後は最大14ミリグラムに増えたと説明。「諏訪湖で効果を検証する価値がある」と結論付けた。水槽内のフナの死亡率は18%と、装置がない場合の24%を下回り、魚の生息にも悪影響はないとした。 湖の富栄養化の一因となるリンの量も、装置がある方が少ない傾向を確認し「装置が減少させた可能性がある」と推測。一方、実験は寒い時期で、水温の高い夏場に比べ酸素が水に溶け込みやすい条件だったことから、装置の効果の規模には不明な部分もあるとしている。 漁協の藤森貫治組合長(68)は、諏訪湖での実験に向け「湖は広いので装置の数を増やすことも検討したい」と話した。漁協では今後、シジミやウナギの養殖にもこの装置が有効か検証するという。(長野県、信濃毎日新聞社)
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