2012年度に県内市町村の補助事業を利用して住宅の耐震補強をした戸数が、過去最高の約270戸に上る見通しであることが8日、県のまとめで分かった。東日本大震災後の11年度は耐震診断が増えており、県建築指導課は「1年遅れで補強の伸びにつながった」とみている。ただ、補助があっても補強費用の自己負担が重いことなどから、県が掲げてきた県内住宅の耐震化率目標「15年度90%」の達成は難しい状況だ。 同課によると、補助事業は02年度に始まり、耐震基準が強化された1981(昭和56)年以前の建築で、震度6強程度の揺れで倒壊する可能性があると耐震診断された住宅が対象。昨年4月1日現在で県内72市町村が耐震補強に補助し、180万円程度の費用のうち国、県、市町村が計60万円を上限に負担する自治体が多い。経済対策を盛った国、県の本年度補正予算成立を受け、市町村が補助額上乗せを予算化する場合は上限が計90万円に引き上げられる。 補助事業を使って耐震補強した戸数は02~05年度は0~99戸、06~11年度は166~241戸の間でそれぞれ推移=グラフ。11年度は大震災で関心が高まり、全77市町村が補助事業を持ち、自己負担のない耐震診断が前年度の約2倍の1363戸に上った。耐震補強は1戸増の227戸だった。 県は耐震診断をした県民に耐震補強工事の事例集を送るなどしており、補強が本年度は増えたことについて「自己負担があるため検討に時間がかかり、1年遅れで伸びにつながった」(建築指導課)と推測。地域別では中南信地方を中心に増えているという。 一方、県内の住宅約75万戸の耐震化率は08年度72%。県は耐震改修促進計画で15年度90%と目標を掲げているが、同年度は80%程度にとどまる見通し。13年度からの新たな総合5カ年計画では90%の達成年度を17年度と2年遅れに変更した。県民からは自己負担の費用の重さを指摘する声や、耐震強度不足でも「高齢だからこのままで良い」といった声が寄せられ、耐震化は容易ではないという。(長野県、信濃毎日新聞社)
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