上伊那郡飯島町の馬肉専門の加工業者が一部の加熱用馬肉を生食用と偽装表示し、販売していた問題で、同町田切の馬肉加工業「大成」が11日、伊那市で記者会見して偽装表示を認めた。同社や依頼を受けて調査した弁護士によると、2011年ごろから偽装し、馬刺しや馬肉ユッケとして少なくとも32トンを卸業者に出荷、販売。このうち、検疫で腸管出血性大腸菌O103が検出されたアルゼンチン産馬肉の製品について、県伊那保健所は同日、食品衛生法に基づき同社に回収を命じた。 同社は命令を受けた製品の他、検疫で糞便系大腸菌群が検出され、加熱用とされた馬肉のうち、自主検査で陰性となった部分を生食用に偽装したという。同社は同日、県と県警に報告し、全販売業務を中止。県警は、商品の品質などを誤認させる行為を禁じた不正競争防止法違反容疑で調べる方針。県も販売経路などを調べている。 大成は、石川県の焼き肉店2店で2月に食事をした4人から腸管出血性大腸菌O157が検出された食中毒で、共通して食べた馬肉ユッケを加工。県伊那保健所の調査で、同時期に同社で加工された馬肉からはO157が検出されなかったが、資料に矛盾点が見つかったという。 弁護士によると、少なくとも昨年1月24日~今年2月末ごろに偽装したことを確認。32トンはこの間の生食用馬肉の販売量の7%ほどに当たる。大成によると、同社の輸入馬肉の国内シェアは4~5割で取引先は約2千社。把握した範囲では、同社商品で健康被害の報告はないとしている。 弁護士や同社の説明によると、偽装は北原実前専務(41)=6日付で辞職=が判断し、営業課の社員1人に指示した。会見で北原前専務は「販売が厳しかった時期で、カナダ産より安いアルゼンチン産がよくはけた。輸入に3、4カ月かかる見込みで、取引先に肉が足りないと言うわけにはいかなかった」と述べた。 田中忠雄社長は会見で「法令違反は甚だしく、許される余地はない。顧客や消費者の皆さまに多大な心配とご迷惑をおかけし、おわび申し上げる」と陳謝した。 同社が回収するのはアルゼンチン産計約860キロで、ロット番号、賞味期限は次の通り。▽355809、2013年7月13日▽356902、同11月24日▽357601、同9月21日▽355810、同7月13日▽356901、同11月17日。問い合わせは同社(電話0120・57・3633)へ。(長野県、信濃毎日新聞社)
↧