信州大工学部(長野市)は、全農県本部(同)などと共同でホウレンソウの自動収穫機を開発し、試作機を完成させた。県内では八ケ岳山麓などの冷涼な気候を生かし、流通量が少なく収益性が高まる夏場もホウレンソウを出荷しているが、手作業の収穫は重労働で、多くの人手が必要なことが課題。高齢化が進む栽培農家の負担を自動収穫機で軽減し、作業の効率化で競争力の向上につなげる。 同本部野菜花き課などによると、ホウレンソウの収穫は、かがんだ状態で深さ5センチほどの土中で根を1株ずつ切る必要がある。収穫の最盛期には、農家によっては数十人の人手が必要といい、労働力の確保が栽培面積拡大のネックにもなっているという。 機械式の自動収穫機を求める農家の声は多かったが、畝のない畑の全面に種をまいた場合、ホウレンソウ同士が絡まりやすく、葉が広がっていたり、石などの障害物があったりすることもあって、ロスを抑えて収穫する技術の開発が難しかった。 信大工学部の千田有一教授の研究室は2010年度、同本部や西沢電機計器製作所(埴科郡坂城町)との共同研究で自動収穫機の開発に着手。昨秋から試作機を用い、畑での実証試験に入った。 試作機のハンドル部分を持って押しながら畑を進み、自動でホウレンソウを収穫。傾きや凹凸がある畑でも地表から深さ4センチの位置で根を切れるようセンサーで制御している。収穫後は土を落としながらベルトコンベヤーで後部のコンテナに運ぶ。力もほとんど要らないという。 千田教授は「夏場のハウス内での作業が大幅に軽減される。機械化によりアルバイト20~30人分が1台で対応できる」と説明。14年度以降の製品化を目指す。 夏場のホウレンソウは、県内では八ケ岳山麓の南佐久郡や諏訪郡などが主産地。気候条件から生産地は限られており、出荷時期を調整することで市場価格も高値が期待できる。同本部は「県内で主力のレタスやキャベツに比べホウレンソウは人件費がかかるが、栽培コストを抑え、栽培面積の拡大につなげたい」としている。(長野県、信濃毎日新聞社)
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