東京電力福島第1原発事故による風評被害で長野県産肉牛の出荷価格が下落したとして、県農協グループの協議会が東電に5億8千万円余の損害賠償を求めた問題で、協議会は27日、今月上旬に政府の原子力損害賠償紛争解決センターでの審理で提示された和解案を受け入れると決めた。和解案は東電が1億400万円余を支払う―などの内容で、協議会事務局の県農協中央会は「十分な賠償額ではないが、早期解決を図るための判断」としている。 中央会地域農政部によると、4日に都内で開かれた同センターでの第5回口頭審理で、仲介委員の弁護士が和解案を提示。その後、県内農協などを通じ、協議会に損害賠償請求を委任した県内の肉牛農家160戸の意見を集約。和解案に同意する意向が多かったため、27日に長野市で開いた協議会の総会で受け入れを決めた。今後、追加支払いを求めて民事訴訟の提起もしない方針。 協議会幹事長の春日十三男・県農協中央会参事は「苦渋の決断だが、厳しい畜産経営の実情を踏まえ、早期の賠償金の支払いが望ましいことなどを考慮して総合的に判断した」と説明。4月1、2日に県内4カ所で開く説明会で委任農家から同意書を得た上で、同月10日までに同センターに報告する予定。 一方、東電は損害賠償の支払いに応じるかどうかについて「(10日の)期限までに回答する予定だが、対応は検討中」(広報部)としている。(長野県、信濃毎日新聞社)
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