県内の住宅市場に好転の兆しが表れている。2014年4月の消費税増税を見据えた「駆け込み需要」とみられる動きが目立ち、ことしに入って来場者が前年の2割増となるモデルハウスも。住宅メーカーには、安倍政権の経済政策「アベノミクス」効果で住宅投資熱の高まりへの期待もある。ただ、政策がまだ消費者の給与増に結び付いていない面もあり、継続的な需要増には慎重な見方もある。 飯田、伊那両市の展示場にモデル住宅を置くヤマウラ(駒ケ根市)。年明けから来場者が増え、2カ所の3月まで3カ月間の休日来場者は前年同期比で2割増加した。9月末までに工事の請負契約を済ませれば、引き渡しが4月以降でも旧税率が適用されるため、営業本部の平沢資謹(もとのり)部長は「契約数は9月までの各月で前年同月比1割増」と見込む。 中信地方で事業展開するスマイルハウス(松本市)は昨秋、若い夫婦向けの土地付き低価格住宅を開発するなどして、増税前の需要の取り込みを図ってきた。13年6月期の売上高は前期比5割増の見込み。山田武雄社長は「駆け込み需要が盛り上がりつつある」と期待する。 住宅展示場では各社が顧客獲得にしのぎを削る。松本市渚の松本住宅公園では住友林業(東京)が3月に建て替え、エス・バイ・エル(大阪市)のモデルハウスが4月末オープンを目指し新築中だ。 県住宅課によると、2月の新設住宅着工戸数は、前年同月比63・0%増。全体の5割超を占める持ち家は22・1%増の442戸で、6カ月連続で前年比プラスとなった。分譲は、マンション2棟(計103戸)が押し上げ、3・1倍の165戸=グラフ。同課は「消費税増税前の駆け込み需要の兆し」とみる。 日銀の新たな金融緩和策で、住宅ローン金利がさらに下がり、住宅需要を喚起するとの期待も。セキスイハイム信越(松本市)の松沢康雄・営業企画部長は「いずれ住宅を購入しようと考えているお客にとって、決断のプラス材料になる」と話す。 株高で景気回復ムードは高まっているが、どこまで住宅投資につながるか―。北部建設(上水内郡飯綱町)の松橋洋一社長は「実体経済が上向いて賃金がアップしない限り、極端な伸びはないのではないか」と見通す。スマイルハウスの山田社長は「増税後の反動減は避けられない」との見方を示し、「今からリフォームなどの新規事業を育てていきたい」としている。(長野県、信濃毎日新聞社)
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