東京電力福島第1原発事故で避難し、今も仮設住宅で暮らす福島県飯舘村の住民約80人が24日、大町市大町温泉郷の招きで同温泉郷に到着した。2泊3日で黒部ダム見学や温泉郷での花見を予定。この日はさっそく温泉で長旅の疲れを癒やし、市民有志らも音楽演奏などで歓迎した。 同温泉郷が招待したのは、福島県内3カ所の仮設住宅に暮らす主に60歳以上の住民。小雨が降る中、ホテルや観光協会の20人余りが2台のバスを出迎えると、住民らは手を振って応え、窓から身を乗り出して「お世話になります」と笑顔を見せる人もいた。宿泊先でくつろいだ後、有志でつくる「白馬おじさんバンド」の演奏を堪能。涙を流して聴き入る姿もあった。 約110世帯が暮らす福島市の松川第2仮設住宅から参加した菅野(かんの)隆幸さん(69)は「土地を借りて農業も再開したが、仮設住宅は狭くストレスがたまる」。帰還の見通しも立っていないだけに、「招待は本当にありがたい。息抜きできれば」と話していた。 招待事業は、大町温泉郷観光親善大使の歌手普天間かおりさんが、同温泉郷に働き掛けたことがきっかけ。普天間さんは福島市内でラジオ出演中に東日本大震災に遭遇し、被災地支援を続けている。10年前に火山噴火で全島避難した三宅島(東京都)住民を招いたこともある同温泉郷のホテル経営者らが「大町温泉郷スマイル倶楽部」を結成し、招待した。歓迎の演奏にも飛び入り参加した普天間さんは「日々の大変さを少し忘れて、一緒にいい思い出をつくりたい」と話していた。(長野県、信濃毎日新聞社)
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