大町市民らが再生した町家や土蔵を舞台に、過去から現代の「食の風景」を演出する「大町のしつらえ展」が25日、市中心街3カ所で始まった。今月改装オープンした「塩の道ちょうじや」(旧塩の道博物館)など築百数十年を経た伝統的な建物で、蔵出しした古くからの食器類や現代の工芸作品を展示・活用している。3会場を巡り市内を歩くことで、街自体の魅力も感じてもらおうという試みだ。 江戸時代の塩問屋・平林家宅だった八日町の「塩の道ちょうじや」では、母屋本座敷に漆塗り金蒔絵(まきえ)のお膳やおわんを並べ、特別な客をもてなした「本膳料理」のしつらえ(用意、準備)を再現した。螺鈿(らでん)細工の調度品や、250年前に役人を接待した献立帳なども展示している。 8年前に町家を改装した上仲町のレストラン「創舎わちがい」では、当主栗林家などの食器類展示のほか、往時の器を一部使った「しつらえ膳」を提供。2011年に芸術の発信拠点として再生された堀六日町の土蔵「麻倉(あさぐら)」では、陶芸、木工などの地元作家11人がさまざまな作品を組み合わせ、しゃれた現代の食卓を提案している。 企画した木工作家の小田時男さん(58)=大町市美麻=は、三者三様の食の風景を表現することで「見た人の食卓アレンジのヒントにしてほしい」。古い建物を再生、活用している実例をつないだ企画でもあり、「これからの『街のしつらえ』の提案にもなれば」としている。 入場料は3カ所共通で800円(ちょうじや、麻倉のどちらかで茶菓子が付く)。「しつらえ膳」は別料金。問い合わせは事務局(電話090・1865・6181)へ。(長野県、信濃毎日新聞社)
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