飯田市を拠点とする自転車チーム「ボンシャンス」所属の18、19歳の男子選手5人が、山間部の同市上村地区に移り住んで練習に励むことになった。地元の自治組織「上村まちづくり委員会」が地域の祭りや行事に参加することを条件に、空いていた教員住宅1棟を市から借りて無償提供することにした。プロ選手を目指す若者たちが、少子高齢化が進む同地区に活力をもたらしてくれることを期待している。 移住は、ボンシャンス代表でプロ自転車選手の福島晋一さん(飯田市)が、若手の育成拠点を設けようと市に相談したのがきっかけ。教員住宅が数年前から空き家となっていたことから上村地区が候補になった。同委員会は住宅提供の条件として、選手が住所を同地区に移し、地域の運動会や祭りなどに参加するよう求めた。 この春高校を卒業した浅尾銀二さん(18)=岡山市出身、沢池陵二さん(18)=長崎県佐世保市出身、内藤風真さん(18)=三重県松阪市出身=は今月中旬に移住。「ボンシャンス上村寮」と命名された住宅を拠点に練習漬けの生活を始めた。5月までフランス遠征中の18、19歳の選手2人も帰国後に寮生活に加わる。 主な練習コースは、同地区から下伊那郡天龍村へ南下して飯田市街地まで北上し、同郡喬木村から伊那山地の赤石トンネル(標高約1200メートル)を通って同地区に戻る約120キロ。内藤さんは「つらいけれどいい練習」と手応えを口にする。 3人はチームから移住するか尋ねられ、「トレーニングに専念できる環境はありがたい」と応募した。近くにはコンビニエンスストアもなく、「ここまで田舎だと思わなかった」というが、近所から食事の差し入れを受けたりと人情の温かさを感じている。地元の「遠山の霜月祭り」(国重要無形民俗文化財)にも参加して地域に溶け込むつもりという。 同委員会の熊谷栄三郎会長(73)は「若者が来ると地域がにぎやかになる。お年寄りには孫が増えたように感じてもらえたらいい」。浅尾さんは「期待に応えられるように頑張りたい」と話している。 上村地区の人口は飯田市に合併した2005年10月の702人から、ことし4月には499人に減少。65歳以上の人口割合(高齢化率)は50・5%に上る。(長野県、信濃毎日新聞社)
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