大町市社(やしろ)の民家で見つかった大量の兵事書類を題材にしたドキュメンタリー映画「大本営最後の指令~遺(のこ)された戦時機密資料が語るもの~」(2011年)が優れた短編映像作品などを顕彰する「映文連アワード2012」審査員特別賞を受賞し、17日、大町高校OBで安曇野市出身のプロデューサー吉丸昌昭さん(72)=東京=らが大町市役所で記者会見した。 映画は、旧社村兵事係だった故大日向正門さんが終戦時の焼却命令に背いて自宅土蔵に保管していた膨大な兵事書類を基に、住民をいや応なく戦争に巻き込んでいく赤紙召集や「志願兵」募集の実態を描く約90分の作品。9月、応募150作品からグランプリ、準グランプリなどに次ぐ評価を得て同賞に選ばれた。 長尾栄治監督(45)は、福島第1原発事故をめぐる情報隠しを念頭に「権力の癖は変わっていない。兵事資料の焼却命令を追究することは今の日本の問題をあぶり出すことにつながる」。大日向さんの死去後、07年に土蔵から兵事書類を見つけた息子の功さん(64)は「やっと戦争が終わったという気持ちではないか」と秘密裏に書類を残した父の心情に思いをはせた。 吉丸さんは「戦争体験者が元気なうちにできるだけ撮っておきたい」と述べ、県内で新たな作品を準備していることを明らかにした。(長野県、信濃毎日新聞社)
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