木曽農協(木曽郡木曽町)が木曽郡大桑村に肉牛を繁殖させ子牛を育てる施設「和牛繁殖センター」を建て、30日に完成式を開いた。木曽地方は生後10カ月程度まで子牛を育てて県内外の肥育農家に出荷する「繁殖農家」が多いが、母牛の飼育や種付け、分娩の負担が大きかった。繁殖センターがその部分を担うことで、繁殖農家の負担を減らし、農家減少に歯止めをかけ、新たに繁殖農家となる人を増やす狙い。県農政部によると、県内でこうした施設は珍しいという。 同村長野の伊奈川沿いに設けた繁殖センターは、50頭を飼える牛舎1棟や堆肥舎などを備える。本年度は母牛35頭を導入し、子牛を産ませて3カ月ほど育てて繁殖農家に供給する。 購入する繁殖農家はその後、6、7カ月育てるだけで、肥育農家へと出荷できる。母牛の飼育や種付けの他、産まれたばかりで病気になりやすい子牛の飼育はノウハウが必要だが、そうした手間や費用を省くことができるようになる。 同農協によると、昭和50年代には管内の繁殖農家は約850戸いたが、飼料価格の高騰などで減少し、現在は100戸ほど。平均年齢は約70歳と高齢化している。2012年度の子牛出荷頭数は約700頭で、昭和50年代より500頭ほど減少している。その一方で木曽地方で育てられた子牛は県内外の肥育農家の評価が高く、需要に応えて出荷頭数を増やすのが課題となっていたという。 本年度、繁殖センターを利用する畜産農家は19戸の見込み。今後5年で25戸にし、母牛も50頭に増やす計画だ。同農協の小幡公良組合長は完成式で「ここを起点に今後、子牛の出荷が増えていくよう期待している」と話した。(長野県、信濃毎日新聞社)
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