県内で熱中症の疑いで救急搬送される事例が相次いでいる。信濃毎日新聞の県内14消防本部・局への取材では、14日も計4人が運ばれ、5月中の搬送者は少なくとも11人に上った。医療関係者は「5月前半に熱中症が相次ぐのは珍しい」とし、例年より日ごとの寒暖差が激しく体温をうまく調節できない人が出ていると指摘。15日も晴れて気温が上がる予想で、県は、小まめな水分補給や服装の工夫などを呼び掛けている。 県内は14日も各地で気温が上昇し、飯田市南信濃で31・6度など7地点で30度以上の真夏日を記録。大町28・4度など、ことし最高を記録した所も10地点あった。 佐久広域連合消防本部によると、14日午後2時40分ごろ、小諸市の男性(88)が自宅の庭で車椅子に座ったまま意識を失っているのを同居の娘が見つけ119番通報。意識不明の重体で佐久市内の病院に運ばれた。 北アルプス広域消防本部によると、北安曇郡松川村の50代男性と大町市の80代男性も、それぞれ病院に搬送。伊南行政組合消防本部によると、駒ケ根市の60代女性も病院に運んだ。3人は命に別条はないとみられる。 北アルプス広域消防本部管内では、9、13日にもそれぞれ80代女性を病院に運んだ。昨年の1件目の搬送は5月31日だったことから、総務課は「予想外に早く症状を訴える人が出ている」と指摘する。 総務省消防庁は例年、6~9月を中心に熱中症の救急搬送数をまとめてウェブサイトで公表しているが、「5月前半に熱中症が相次ぐのは想定外」(救急企画室)。この時期の搬送の頻発に「新たな注意を呼び掛けたい」とする。 長野地方気象台によると、長野で4月21日に1961(昭和36)年の観測開始以来最も遅い積雪を観測。4月下旬の気温は平年よりも各地で低かった。寒気の影響は5月も続き、平均気温は平年より低い所が多かったが、9日は晴れて気温が上がり、飯田市南信濃や飯田、松本など計7地点でことし初の真夏日を記録。13、14日も真夏日になった所があった。 同気象台によると、晴れれば放射冷却で朝の気温が下がり、日中は気温が上がりやすいため、一日の温度差も大きい。14日は上田や佐久など最低気温と最高気温の差が20度以上ある所もあった。伊那中央病院(伊那市)で救命救急を担当する北沢公男副院長は、相次ぐ熱中症の搬送について「熱に対する体の耐性ができていない時期に、寒暖の差が激しい日が続いたのが要因の一つだろう」とみる。 県健康長寿課は、外出する時間帯を選んだり、黒っぽい服装を避けたりして、体温調節に気を配る必要があると指摘。早めの水分補給や、汗をかく機会を増やして体を暑さに慣れさせていくことも必要としている。(長野県、信濃毎日新聞社)
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