果樹を中心とする4月の凍霜害の農業被害額が35億6200万円余と判明した4日、農業関係者からは県産果樹の市場流通への影響を懸念する声が上がった。大きなダメージを受けた印象が全国に広がれば、築いてきた市場での地位を他産地に取って代わられかねないとの懸念も。県や農協グループは、被害を免れた果実を確実に育てるとともに、市場関係者に今後の着果状況や出荷見通しについて情報提供を強め、高いシェアの維持を図る方針だ。 県農政部が公表した被害額(5月末時点)のうち、果樹は33億4千万円余と9割余を占めた。品目別ではリンゴが最大の14億200万円。下伊那、松本各地方事務所管内で被害が膨らんだナシが9億8200万円で続いた=表。 伊那市のリンゴ農家の男性(65)は、ふじで2、3割、つがるで5割の減収を見込む。「果実の一部が変色する懸念もあるが、被害を受けなかった果実はしっかりと栽培し、良品として出荷していきたい」と話す。 県の2011年の農業産出額のうちリンゴは259億円で全国シェア2位、ナシは39億円で7位。今回の被害は大きかったが、県全体を考えると、最終的には一定の生産量が見通せる。県や農協グループでは技術指導を通じて残る果実を確実に育て、販売減を食い止める計画だ。 全農県本部は3日、県内外の卸会社24社の代表を集めて長野市内で開いた会合で、「農協ごとに着果状況を正確に把握した時点で、卸業者に流していきたい」と確実な情報提供を約束。ナシや柿が被害を受けたみなみ信州農協(飯田市)も、職員を市場に派遣したり市場関係者を産地に招いたりして、情報提供に努める方針だ。 県内の果樹生産者らでつくる県果樹研究会の坂口勝会長(上田市)は「市場とは長年の付き合いがあり、販売への影響は心配ない」と強調。その上で、「凍霜害で県全体の作柄が悪いという『風評被害』が起きないよう、正確な情報を伝えていかなくてはいけない」と説明する。 市場で取り扱う側の長野県連合青果(上田市)の堀雄一社長は「多少形が悪くても、味が良ければ、それを前面に押し出したPRは可能。最後まで頑張って果実を育ててほしい」と話している。 (青木信之)(長野県、信濃毎日新聞社)
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