梅雨入りした県内で少雨傾向が続き、農業用水の不足が深刻化している。東御市八重原(やえはら)では、多数のため池の一部が空になり、田植えを終えたばかりの水田で干上がる場所が出始め、地元農家でつくる八重原土地改良区は5日、「このままでは農作物の収穫に大きな影響が出る」として市に対策本部設置など支援を申し入れた。佐久市や小諸市などでも農業用水が不足し、農作業に遅れが出ている。 長野地方気象台によると、東御市の5月の降水量は38・5ミリで、平年の4割強にとどまる。県内は梅雨入り直後の5月29、30日に全域で雨が降ったが、6月は降水を観測する45地点のうち40地点で降水を観測していない。 八重原は台地にあるため、蓼科山から引く用水と雨水をため池に引いているが、同改良区によると、5月は蓼科山からの用水が「例年の10分の1程度に激減した」。地元で最も大きい貯水量約13万トンの明神池は例年の3割以下しか水がなく、このままだと1週間ほどで底をつくという。一部の水田は土が露出してひび割れ始めている。 同改良区は5月から、台地の下を通る長野新幹線のトンネル下部を流れる地下水をくみ上げ、明神池に入れている。6月に入り、使っていない井戸や別のため池から分けてもらっているが、水不足は解消していない。同改良区の支援要請に東御市の田丸基広副市長は「現状を把握して対策を検討する」と応じた。 小諸市の御牧ケ原(みまきがはら)などでも水不足が深刻で、例年5月中に終わる水田の代かきが一部地域でまだ終わっていない。同市農林課によると、一部のため池が干上がっており、市御牧原土地改良区が5月上旬から、千曲川の水をポンプでくみ上げており、同課は「今後1週間から10日まとまった雨が降らないようだと、稲の生育にも大変な打撃になる」と危機感を強めている。 佐久市では5月上旬から志賀、新子田地区などで用水路の流量が減少。同市土地改良区によると、志賀地区では農業用水が底を見せている場所もあり、5月9日にポンプを設置し、上流のため池や井戸から水を送っているが、行き渡らない地区も出ており、有線放送で節水を呼び掛けている。長野市信州新町でも、ため池の水が不足し、農家から一部で田植えができない―との声が出ているという。(長野県、信濃毎日新聞社)
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