長野県版レッドデータブックで絶滅種とされたリンドウ科の植物「コケリンドウ」が、諏訪地方の八ケ岳山麓で相次いで見つかったことが分かった。レッドデータブックが発刊された2002年以降、絶滅種とされた植物のホソバノシバナ、スギナモなど4種が既に県内で発見されており、今回のコケリンドウを含む5種は県によるレッドリスト見直しの対象となる。
コケリンドウは5月3日、県希少野生動植物保護監視員で茅野市に住む小林智子さん(65)が、同市の八ケ岳山麓にある標高約1300メートルの道路沿いで見つけた。同月中旬から下旬にかけて詳しく調査し、約120平方メートルの範囲に開花、未開花を含め311株あるのを確認した。
これに先立つ10年には、下伊那郡松川町の団体職員三石稔さん(52)が諏訪郡富士見町でコケリンドウを発見。12年に県環境保全研究所(長野市)の尾関雅章研究員(42)=植物担当=とともに調査し、数十株を確認した。茅野市の小林さんも同じ場所でことし5月中旬に195株を確認。同研究所は、三石さんによる発見の経緯をことし3月発行の研究報告書に掲載した。
コケリンドウは高さ3~10センチと小型の越年草で、ノシバなどの短い草地が生育地。ハルリンドウやフデリンドウに似ている。海外では中国大陸から朝鮮半島、台湾、インド、シベリアにかけての広い範囲に、国内では本州、四国、九州に分布している。
尾関さんは「樹木の陰はもちろん、草丈の高い草地でも育たない」と説明。2カ所の発見場所は公園や道端で、草刈りも行われているため、生育に必要な日照が十分だったらしい。
県植物誌などによると、コケリンドウは県内では1919(大正8)年に北佐久郡軽井沢町で採集されて標本にされたのをはじめ、木曽郡木曽福島町(現木曽郡木曽町)、北佐久郡望月町(現佐久市)などでも見つかった。ただ、28年以降の標本はなく、県版レッドデータブックでは絶滅種とされていた。
2カ所で相次いで見つかったことから、尾関さんは「他にも生育地があるかも知れない。小さい花だが、見つけたら連絡を」と呼び掛けている。(長野県、信濃毎日新聞社)
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コケリンドウ、茅野で発見 県版レッドデータブックで絶滅種
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