松枯れ被害が深刻になっている松本市四賀地区で、市天然記念物に指定されている「岩井堂のアカマツ」の葉が枯れていることが11日、分かった。市はこのアカマツの指定を解除する方針だが、同地区では県天然記念物「東北山の千本松」も松枯れで今月初めに伐採されたばかり。市は20日、同地区の松林に初めて無人ヘリコプターで農薬を散布する予定だが、松枯れが天然記念物にまで及ぶ事態に「対策の手が回らない」と頭を悩ませている。 岩井堂のアカマツは同地区会田の人家と里山の境にあり、樹高22メートル、幹回り約4メートルの大木で、樹齢は不明。同市に合併する前の旧東筑摩郡四賀村時代に天然記念物に指定された。市文化財課によると、10日に住民から通報を受けて松枯れ被害を確認した。同課は「伐採のめどは立っていないが、指定解除の手続きは進める」としている。 同地区では2012年度に松枯れ被害が急増。同年度に処理した木は前年度比715本増の1975本に上り、市内全体の被害木の6割を超えた。11年度までは被害木を全て切り倒し、松枯れの原因の一つとされる線虫を運ぶカミキリの幼虫を殺虫剤で処理したが、12年度は「簡単に処理できない奥山で被害が発生しており、全量駆除ができない状態」(市耕地林務課)という。 そのため、四賀地区では12年度に無人ヘリコプターによる農薬散布を実施するかどうかを議論。反対意見も出たが、特産のマツタケが収穫できる松林約20ヘクタールに絞り、無人ヘリで農薬散布することを決めた。 県や市の天然記念物の松が相次いで被害を受ける事態に、住民の中には「事前に予防措置を取っていれば枯れなかったのではないか」と話す人もいる。市天然記念物の松は他に5件(1件は松林)あるが、市文化財課は「予防のための薬剤注入などは、所有者が自主的に市の補助制度を活用してやってもらうしかない」と話している。(長野県、信濃毎日新聞社)
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